風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

ベイビー・ブローカー

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あまり客足が伸びていないと見えてあっという間に上映回数が減らされてしまった。

是枝裕和監督作品『ベイビー・ブローカー』。

韓国の大スターたちを是枝さんの脚本で撮るとどうなるの?と興味津々だった映画を、観に行くことができた。

 

孤児院の赤ちゃんポストに置かれた赤ちゃんを売買するブローカーたちと、赤ちゃんを手放そうとしながらも諦めきれない母親、孤児院から付いてきた8歳の男の子。そんな彼らを現行犯逮捕しようと追う2人の女刑事をめぐる風変わりなロードムービー

全員主役級の韓国の大スターを起用しての華やかな逃避行劇、となるところが、是枝監督だからか時に眠くなるほど淡々と物語が進む。

多額の借金を抱えながらクリーニング店を営むサンヒョン(ソン・ガンホ)が副業でブローカーをやっている背景は分かったが、彼が最後はどうなったのかがよく分からないままだったし、相棒ドンス(カン・ドンウォン)が赤ちゃんの母親であるソヨン(イ・ジウン)を好きになる過程ももうちょっと丁寧に描いて欲しかった。他にもところどころ??な点がいくつかあって。(私が寝てたのか?)

それと役者たちはもちろん上手いと思うが、ことばが韓国語なのと文化的背景が日本と違うのもあって、是枝監督の台詞(脚本)がいまいち馴染んでいなかったような気がした。だからこの映画の肝である母親ソヨンのセリフ「生まれてきてくれてありがとう」が私にはそれほど沁みてこなかった。

なかなか養子縁組が成功しないまま旅は続き、最後に赤ちゃんは一番ベストな場所に落ち着く。それがもう、ハッピーエンドというよりはファンタジーの世界になっていて。よいのかな?よいのだろうな。現実ではなかなか無いラストで。だって映画だからな。

少子化、貧困化が進む日本ではこれから益々子どもを産み育てることが大変になっていくだろう。望まぬ妊娠をして捨てられる子どもはもちろんのこと、血がつながっていようが無かろうが、他人の子どもも社会全体で育てようよという空気がもっと広がるといいと、この映画のラストを見て感じた。私にはその気持ちの準備はある!

はよ変われ日本のシステム。男たちの意識。

 

あ、これは余談だが、映画の中での食事のシーンについて。とくに張り込み中の女刑事たちが車中で食べ物を口に入れながらお喋りしたり、くちゃくちゃ盛大に音を立てながら食べるのが気になった。私は韓国ドラマや映画をそれほど見ているわけではないけど、どんなにきれいな女優たちでも食べるシーンはいつもそんな感じだ。韓国ドラマに詳しい友人に聞いてみたら「韓国ではそれはタブーではない」とのこと。国が違えば習慣も違う。面白いなぁ!

 

あと「空気人形」で完璧ビューティードールだったペ・ドゥナ(今回は女刑事役)が、歳を重ねても美しい首筋と顎のラインをキープしていることにもちょっと感動した。

パッチワークの丘へ

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先月のこと。旭川〜美瑛のコースで車を運転し、ひとり旅をしてきた。

泊まった旭川のホテルは一人で過ごすにはもったいないくらい広くて快適だった。まだまだ観光客が戻ってきていないからか、部屋をアップグレードしてくれたのだ。

カゴが好きすぎて、今回の旅では2個持ち。

💋のついたカゴには着替えと化粧品と本を。まんまるのカゴは手持ち用。お財布やハンカチ、マスクケースなどを入れて。

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夜ごはんを食べようと予約なしで入ったホテルの和食店。ここも殆ど客がいなかったからか、会社の宴会をするような立派な個室に通されて、さすがに一瞬「え…」と寂しくなった。でも、泡が美しいクラシックの生と揚げたての天ぷら御膳が運ばれてきたら、そんな気持ちはどこへやら。

しいたけ、アスパラ、さつまいも、白身魚、しそ、なす、海老…プロが揚げてくれる天ぷらをひとり贅沢に味わう幸せに浸った。

 

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朝ごはんはここで食べると決めていた。

東川町の大好きなお粥やさん「奥泉」


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札幌から久しぶりにやって来た私を笑顔で迎えてくれた店主。またまた特等席に案内してくれた。


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そら豆のお粥、焼売、水餃子、そして中国茶までをゆっくり堪能。

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絵のように美しい畑の景色を独り占めしながら。

 

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お腹をポンポコリンに膨らませたまま、次に目指したのは東川町から30分の丘の町、美瑛。

駅のすぐそばに、青と白のストライプの屋根がかわいいクリーニング店を見つけた。店員さんの制服もバービー人形が着ているような青×白のストライプのワンピースだったらいいのになぁと想像した。

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美瑛に来たら必ず立ち寄るお店「スイノカゴ」

ちょうど見たかった展覧会が始まったばかりだった。

植物や花にまつわる作品や雑貨が飾られた一角はアートギャラリーのようだった。

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アンティークショップSkantiqueさんがスウェーデンで買い付けした、味わい深い「食せるキノコの本」に心惹きつけられて購入した。

表紙は色褪せているが、この深い抹茶色と黄色いキノコの色のコントラストが気に入ったのだ。

ページを開くと、本の持ち主だった人が挟んだと思しき四つ葉のクローバーが何枚も出てくるというオマケつき。

本の佇まいから考えてもかなり古いものと見受ける。何十年も経って、遠い異国の北海道で四つ葉を見つけて喜んでいる人がいることを天国にいる前の持ち主さんが知ったら、きっと驚くだろう。

 

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さて、この日のメインイベントは、この白樺回廊の向こうにある料理店でお昼ごはんを食べることだった。


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料理家たかはしよしこさんが営む「S/S/A/W BIEI」

東京・西小山のS/S/A/Wより、たかはしさんご一家がここ美瑛に引っ越してきたと聞いた時から、いつか行ってみたいと憧れていたレストランだ。

白樺の森に囲まれた素晴らしい環境は「どんなお料理が出てくるのだろう?」というワクワク感をより膨らませた。宮沢賢治の『注文の多い料理店』のレストランみたいだと思った。


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最初に目の前にサーブされたのは、アスパラガスとラーラキャベツふたつの味が楽しめる「丘スープ」。

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“パッチワークの丘“と呼ばれる美瑛の畑の景色を閉じ込めた芸術的なスープだ。ひと匙口に運んだ瞬間、私を含めカウンター席に座った6人の客全員が、多分同時に目を丸くしていたと思う。

今朝まで畑にいたんだね?と問いかけたくなるアスパラとキャベツの瑞々しい命が、スパイスと溶け合って、身体に染み込んでゆく感覚。

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メインディッシュの《初夏へと向かう韓国式手巻きプレート》は、一言で表現すると「愛と氣がガツンと詰まった一皿」だった。

確かな作り手たちが育てた旬の野菜たちが、SSAWの技術とアイデアの結晶であるスパイスや調味料をまとって、最高に美味しい状態でその身を捧げてくれていた。

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デザートの「いちごとラベンダーのクッキーアイス」がピンクのお皿にのってやってきた。

たかはしよしこさんが私の目の前に立って瞳をキラキラさせながら、花の実にいたるまで、材料ひとつひとつについて説明してくれた。

カウンター席から見えるキッチンは、まさに生の舞台のようだった。スタッフの皆さんも全員いきいきキビキビと働き、心からのおもてなしをしてくれた。

こちらは、感動と感謝の気持ちでいっぱいになった。


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お店の森を抜けるとすぐこの景色。


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スコールのような激しい雨が降っていたのだけど、夏の始まりって感じがして、それもまた気持ちよかった。

 

🍦🧵 スイノカゴ

https://www.suinokago.net/

🍚 中国茶おかゆと点心 奥泉 

https://ameblo.jp/neroli1216/

🍽 SSAW BIEI 

https://s-s-a-w.com

忘れた頃に阿部サダヲ

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だいぶ前になるけれど、13年ぶりに監督業に復活したレオス・カラックスの「アネット」を映画館で観た。

人気スタンダップ・コメディアン(アダム・ドライバー)とオペラ歌手(マリオン・コティヤール)。その二人の間に生まれた娘アネットの波瀾万丈な人生をロック&オペラなミュージカル仕立てで描いた風変わりな映画だった。

もったりとした顔がやっぱり苦手だわ〜なアダム・ドライバーは「HOUSE OF GUCCI」に続いてまたもやサイコパスなDV男を演じていた。

物語前半、恋に落ちたふたりが森の中を駆け抜けるシーンは私の大好きなジャック・ドゥミの「ロバと王女」の世界を彷彿とさせ、70年代フランス映画のような雰囲気でステキ!と思った。

しかし後半、夫婦関係が壊れてからは悪夢のようにドロドロとしたおぞましい展開に。

レオス・カラックスのベスト作品は、なんといっても情熱の塊みたいな映画「ポンヌフの恋人」だよなぁと思い出し、また見返したくなっている。

 

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「アネット」のあと、立て続けにサイコパスな男が主人公の映画を観た。

20人もの高校生を次々に手にかけた連続殺人犯を阿部サダヲが。そして事件の真相を巡って犯人に翻弄される大学生を岡田健史が演じた。

とーにーかーくー、サダヲのやることが残虐すぎて、冒頭10分で「こ、これは直視できん!」状態に。

大抵の怖い映画に耐性のある私なのだから、よっぽど酷いと考えてもらってよい。それに監督は躊躇なき残酷シーンでおなじみの「孤狼の血」シリーズを撮った白石和彌さんだ。サダヲの演技と監督の演出が怖すぎて、ある意味、孤狼の血の方が平気じゃない?って思った程だ。

しばらくはテレビで阿部サダヲを見かけるたび「ヒーッ」と震えてきて仕方がなかった。それくらいサダヲのサイコパスな目と、一筋縄ではいかない練られたストーリーが見事な映画であった。


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つい先日、NHKで始まった連ドラ「空白を満たしなさい」をどれどれと視聴していた。

自殺を疑われたまま亡くなった男・土屋(柄本佑)が3年後に突然生き返って、妻(鈴木杏)の前に現れる。

自身の死の真相を追うヒューマンサスペンスということで、よくある「黄泉がえり」の話でスピリチュアル寄りなのかなぁと少し眠くなりながら見ていた。

が!華麗な蹴りで鳩を瞬殺する警備員「佐伯」が登場した瞬間、目が覚めた。阿部サダヲだ!

 

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「佐伯」が主人公の死に深く関わっていることが分かった瞬間、ドラマの空気がガラッと変わった。

黒目に光はなく、幸せそうに笑いながら狂った台詞を喋るサダヲの姿に背筋が凍った。

原作は平野啓一郎の小説。脚本は「死刑にいたる病」と同じ高田亮さんだ。不穏さを煽る音楽もいい。

いやぁ、サダヲの登場で先が全く読めなくなった。このドラマが俄然楽しみになってきた!

 

2022年 冬 嘘ミドラマ大賞発表

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今期の春ドラマももうすぐ終わりそうなのに、2022年冬期(1月〜3月)のドラマ大賞の発表を今ごろ?ええ、今頃やります。書き溜めていて公開するのをすっかり忘れていました!

日本のテレビドラマを全く観ない人にとっては毎度ながら何のことやら?でしょう。長いので読み飛ばしてくださいね。ドラマ好きな方にお届けする、嘘ミドラマ感想記。

それでは、参りたいと思います。

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ミステリー部門での佳作は「逃亡医F」「真犯人フラグ 真相編」(どちらも日本テレビ)。

「逃亡医F」は恋人殺しのぬれぎぬを着せられ、地位も名前も捨て逃亡する脳外科医・藤木(成田)の逃亡劇。F(藤木)を追う恋人の兄(松岡昌宏)の強烈なシスコンぶりと熱いキレっぷりがもうギャグの域で、毎回それを見るのが一番の楽しみだった。あと佐々木フェローを演じる安田顕の安定の変態っぷり。

ところで、天才脳外科医であるFは手術時に必ずカセットテープで昭和歌謡を聴くのだが、なぜか「真犯人フラグ 真相編」でも、カセットテープが相良(西島秀俊)の一番の理解者であると見せかけ終盤で実はめちゃくちゃ悪女だったのを暴露する二ノ宮(芳根京子)がいつもカセットテープを持ち歩いていた。静かにカセットテープブームが起こっていた今期のドラマ界。

そして不気味な殺し屋、強羅誠役でいい味を出していたダチョウ倶楽部の竜ちゃんに合掌。

 

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ミステリー部門、優勝はやっぱりこれ。

「ミステリと言う勿れ」フジテレビ
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菅田将暉の整くんがかわいすぎて。漫画の原作と比べてどうとか、そんなのはどうでも良かったもんね。

ミスドのカレードーナツも箱がほしくてすぐ買いに行った。

美術や音楽も好きな雰囲気だったので、一作ずつ丁寧に鑑賞させてもらった。毎回幸せな時間をありがとう。

続編を匂わせる終わり方が気になった。ぜひいつか戻ってきて欲しい。

 

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ほろり人情ドラマ賞はこの2本に。

「妻、小学生になる。」TBS「しもべえ」NHK

「妻、小学生になる」は最愛の妻(石田ゆり子)を亡くし生きる希望を失った圭介(堤真一)と娘(蒔田彩珠)の元に、妻が小学生の女の子になって戻ってくる、SF的な物語。

それが嘘っぽくならず感情移入できたのは、役者たちが上手いからに他ならなかった。とくに小学生版の妻を演じた毎田暖乃ちゃんの演技力がすさまじく、彼女は将来すごい女優なるだろう。

蘇り系の話は必ず死者があの世に帰るのがお決まりだから覚悟していたけれど、お別れのシーンでは涙が止まらず大変だった。

ドラマ全体に漂う黄泉の国とこの世の狭間のような浮遊感を感じさせるパスカルズの音楽がとても良かった。

 

そして「しもべえ」。

私と息子は揃って安田顕が大好き。いつも個性の強い脇役が光る彼が、今回は主役!!ヤスケンときたらもちろんコメディー要素満載。楽しい学園ドラマでもあり、毎度笑わせてもらった。

勉強も恋愛もダメダメな女子高生ユリナが何気なくダウンロードしたアプリ「しもべのしもべえ」。

困ったことがあった時このアプリを開き「しもべえ」と叫ぶと、謎のおじさん・しもべえ(安田顕)がどこからともなく現れて、問題を解決してくれるのだ。

ところで、しもべえって一体何者なのよ?

実はしもべえは昏睡状態で入院中のユリナのお父さんの魂(娘が心配すぎて)が生み出した人間だったのだ。

お父さんの意識が戻り、しもべえがこの世から消えてしまう最終回は、やはり涙なしでは見られなかった。

私にも困ったときに駆けつけてくれる「しもべえ」がいたらなぁ〜

 

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そして《思いがけぬ拾い物賞》は「おい、ハンサム」東海テレビ に。

男を見る目がない年頃の娘たち3人、そして妻。そんな女だらけの家をまとめる頑固おやじが吉田剛太郎ときたら、ドタバタホームコメディに決まってる。

「ちょっと面白そう」と思って見始めたドラマだったが、意外にも人生哲学が詰まった、あったかくて素敵なドラマだった。

とにかくお父さんは父としてもサラリーマンとしても頼り甲斐があり、生き方がハンサムで。

お母さん役のMEGUMIとの掛け合いも小気味良い夫婦漫才を見ているようだった。

最近のドラマでは「あの時キスしておけば」や「極主夫道」など、MEGUMIのコメディエンヌぶりが素晴らしい。吉田剛太郎もだけど、私は最近のMEGUMIが大好きだー。

 

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「恋せぬふたり」NHK は、新しい生き方や価値観を知るきっかけになるドラマだった。

このドラマは恋愛的にも性的にも他者に引かれない男女が人生のパートナーになる過程を描いた物語で、そのようなセクシュアリティのことを「アロマンティック・アセクシュアル」と呼ぶそうだ。

そんなアロマなふたり(高橋一生岸井ゆきの)が個を尊重し合いながら丁寧に暮らし、それぞれがベストな生き方を見つけるラストは見ていて清々しかった。

脚本を書いた吉田絵里香さんがこの作品で第40回向田邦子賞を獲ったのも、ドラマのファンとして嬉しかった。

 

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そして最後の発表になるが、2022年の冬ドラで私の中でNo. 1に輝いたのは、岡田惠和脚本の「ファイトソング」TBS だ。

岡田さんの書く脚本はいつもあたたかくて優しくて、登場人物すべてが愛おしい。

耳が聞こえなくなる空手家のヒロイン・花枝を清原伽耶一発屋の変人ミュージシャン、芦田を間宮祥太朗。花枝に万年片想いの一途な幼馴染、慎吾を菊池風磨

不器用な3人のじれったくて切ない、恋と成長の物語!というまぁ王道のラブストーリーではあるが、恋する想いの切なさや楽しさをピュアに描いた名作だったと思う。

 

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間宮祥太朗にギター持たせてPerfumeの「STAR TRAIN」を歌わせるなんて、かっこよすぎて反則!祥太朗がこんなに歌がうまいなんて知らなかったし!

耳が聞こえなくなった花枝に新曲を聞かせるシーン。彼女にこの歌をどうやって伝えたかというと。背中に寄り添わせ、自らの身体をスピーカーとして「リズムで曲を感じさせた」のだ。

きゃーなんてロマンティックなの〜〜!この最終回を録画したDVDは永久保存版ね。

 

 

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その他、こちらの2本のことを忘れていた。

ザ・阿部寛劇場「DCU」(T B S)、我らがアニキ・阿部寛のドラマは面白くない訳がない。「下町ロケット」以来の吉川晃司アニキとの共演も渋いオヤジ好きな私としては嬉しかった。

「となりのチカラ」(テレビ朝日は、松潤が近所の諸問題に必ず首を突っ込むお節介役で全然イケメン役じゃなくて毎回イライラさせられたけど、なんだかフワフワとした不思議な空気感のあるドラマだった。そして見事な松嶋菜々子の無駄遣いっぷりよ。

 

と、長くなりましたがこの辺で2022年冬期ドラマの感想はおしまいにしようと思います。

本当に見るべきドラマが多くて大変だったけど、寒い冬を楽しく過ごさせてくれて、ありがとうテレビさん!!

 

春ドラマは冬ドラマに比べると見ている本数は少ないので、次回のドラマ感想記はもっとサッパリとしたものになると思います!

 

 

LOVE TOYA

日曜日。よし、よく晴れてる!前日にヨガでちょっと無理してギックリ腰気味ではあったけど、この日が最終日の展覧会を見るために、洞爺湖まで車でひとっ走りしてきた。

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吉田卓矢《いきものたちが宿る帆布(キャンバス)》。

吉田さんは蘭越町にアトリエを構え、創作活動をされているアーティスト。去年札幌の庭ギャラリーでの展覧会で絵を見て好きになり、作品を追いかけていきたいと思っている人だ。

今回、洞爺村での展示は2箇所に分かれていて、まずは一つ目の展示場、雑貨店のtoitaさんへ。

ここで買い物をしながら小さな絵を見たあと、もうひとつの会場となっていた「洞爺村芸術館」を訪ねた。

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目の前が洞爺湖という、素晴らしく長めの良い美術館。

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なんだか夢のように平和な場所だった。

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中は古い小学校のような素敵な趣きがあり、ちょっと美唄のアルテピアッツアに似てるかなぁと感じた。


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入り口に展示されていた絵、この2人はヨガをしているのかな。
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線ものびやかで大らかで。描かれる世界は温かくハッピーな理想郷だ。
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この絵の迫力や色の美しさは写真ではとうてい伝えきれないかも。地球上のどこかにこんな楽園があるのだろうか?


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かわいい布でパッチワークされたカーテンがかけられた劇場風の演出が施された作品も。f:id:usotomishin:20220606224453j:image

廊下から中を覗けるこんな仕掛けもあった。

絵も建物もオブジェも、ぜんぶひっくるめて吉田さんの作品となっていた。
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お父さんに手を引かれた子どもが絵を真剣に見ていたり、また違う子どもは床に寝そべって絵を見ていたり。何だかほのぼのとしていて、窓からは湖からの風が優しく吹いてきて。

無理して来てほんとうに良かった…


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芸術館すぐそばにあるパン屋のラムヤート前には、彫刻家である奥さまの作品も置かれていた。わりと無造作に。え?いいの?いや、そんな大らかさが洞爺村のよいところ。

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湖のすぐ前のベンチに腰掛けて、お昼ごはんを食べた。

水の駅に新しくできた食堂で作ってもらったオムライス。地元の野菜と卵が使われていてすごく美味しかった。

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水辺では金髪の小さな男の子がフルチンできゃーきゃー言いながら何往復も走っていた。

こんな気持ちのいい景色を見たら、そりゃ裸で走りたくもなるだろう。


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お土産に食の雑貨店「toita」の軒先で、生産者さん自らが販売されていた豊浦町のいちごを買った。「けんたろう」という、道外にはほとんど流通していない北海道産の品種だそうな。

それとラムヤートで買ったひまわりの種のパンや、チョコレートパンも一緒に車に乗せて。帰り道は家に着くまでずーっと甘いいちごの香りとパンの天然酵母の香りが充満していた。

車の中に美味しい食べ物があるっていうだけで、幸せな気持ちになるもの。(そしてこういう時、いま遭難してもしばらくは生きていける、と必ず思ってしまう)

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toitaでは、いちごの他に前から気になっていたEbi-Oilも買った。干しエビ、アミ、唐辛子、レモングラスなどが入った見るからにヤバそうなオイル。

豆腐にかけるのはまぁ当たり前として、帆立とアスパラのクリームパスタに和えて食べたらすごかった!

バンクシー展 天才か反逆者か

 

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イギリスの覆面アーティスト、バンクシーの展覧会「天才か反逆者か」を観にいってきた。

ステンシルを使ったバンクシーのストリートアートが世界の街角に突如現れてニュースになるのを見聞きしたことはあるが、作品をこうしてひとまとめに観られる機会はなかなか無かった。しかも札幌で。世界のリッチなコレクターさんたちに感謝!

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私が想像した以上にバンクシーの作品は反戦、反権威主義、消費社会への警告など、反骨精神に溢れていた。


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昔の新聞にはよく世界情勢や政治家を揶揄する風刺漫画が載っていたものだけど、それを思い出した。バンクシーはそれを新聞ではなく、突如現れた世界のどこかの壁や橋など路上に作品を残して消える。

なるほどステンシルの型があればスプレーするだけで作業が手軽で、時間が取られない。その手際の良さ、ストリートに残る作品はとびきりお洒落でダークユーモアに溢れていて。ときには心まで盗んでいくルパンのようでカッコいい。

 

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スマホにアプリを入れると会場で音声ガイドが聴けるのだが、イヤホンを忘れたのでそれができず残念だった。

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しかし絵に込められた思いはストレートで、レターメッセージも読めばわかる簡単なものなのだったので「ガイドから知らされることより自分で感じること」を大事に鑑賞した。
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とくに戦争を皮肉る作品はよく見るとゾッとするものが多く、強烈だった。
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バンクシー作品はウォールアートだけではなく他にもいろいろあることを初めて知った。

展覧会では2015年に5週間だけバンクシーら60組のアーティストにより開催された「Dismaland」の映像インスタレーションを見る事ができた。ディズマランドはイギリスのウェストン・スーパーメアーのリゾート地の跡地に作られた、悪夢のようなアート作品を楽しむテーマパークだ。

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たとえば…ひっくり返った馬車から飛び出たシンデレラとそれに群がるパパラッチの様子は、イギリスのダイアナ妃が自動車事故で亡くなった時の様子を皮肉っている。

他にもぼろぼろのシンデレラ城の前に切り刻まれて歪んだアリエルがいたり、難民すし詰め状態のボートを操縦するアトラクションがあったり。他にも、世界最悪な接客サービスが受けられるなど、悪趣味ぎりぎりのセンスがてんこ盛りだったそうな。史上最低のテーマパークDismalandに、当時知っていたなら行ってみたかった。

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《The walled off  hotel》は、バンクシーのアイデアが詰まったアート作品ともいえる、パレスチナベツレヘムに現存するホテルだ。

イスラエルとの分離壁の真っ正面に建つこのホテル、スイートルームの窓を開けると見えるのは汚い分離壁だそう。世界一眺めの悪いホテルという別名で呼ばれているこのホテルにいつか泊まってみたいと思った。


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そしてやっぱり私は手芸作品に目がいくのだった。

クッションに刺繍された文字や 
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おばあたちの編むセーターに書かれた文字に心を掴まれた。

PUNKS NOT DEAD 

THUG FOR LIFE

私が大金持ちだったなら、この作品を競り落として、離れのアトリエ(ここまでセットで妄想)に飾るだろう。

 

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一緒に行ったNさんに撮ってもらった。

《Girl with Baloon》の看板とともに。

流浪の月

 

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流浪の月・凪良ゆう

《親の無償の愛で保護されるべき子供時代に、それぞれの家庭で深く傷ついてきた大学生の文(ふみ)と小学生の更紗は、雨が降る公園のベンチで運命的な出会いをする。世話になっている叔母の家にはある事情があって帰りたくない更紗。そんな更紗に傘を差し出し「うち、くる?」と呟く文。一般的にはそれが「ロリコン」とか「誘拐」と言われてしまうような歳の離れた2人はともに暮らし始める。文のアパートは自分たちらしくいられる居心地の良い場所となるが、そう長くは続かず引き裂かれる。

更紗が大人になってからの再会。更紗が付き合っている彼とも紆余曲折あってその過程がまた辛いのだが、物語は互いの最大の理解者であるふたりが共に生きてゆこうとするラストに到達する。ふたりがいつまでも幸せでありますように。心から応援したい気持ちになった。

この本が映画化される!文役に松坂桃李。これ以上ないキャストに思うが、いつも明るい広瀬すずがこの複雑な育ちをした少女更紗をどう演じるのか映画公開が楽しみ。》

 

この文章は原作の小説を読み終えて、すぐに感想ノートに走り書きしたものだ。


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そして数ヶ月後。楽しみにしていた映画が公開された。

桃李作品なのでいつもながら公開初日の舞台挨拶中継付きで観た。

小説からは文と更紗の関係は男女の性愛とは違う、魂レベルでの深い結びつきを感じたのだが、映画にもそれがしっかりと描かれていて「ああ、ちゃんと文と更紗がいて良かった」と思った。

監督は「怒り」「悪人」などの李相日さん。

美しく悲しいこの物語を丁寧に繊細に描いていて、小説を読み終えたときと同じような切ない余韻が残った。

撮影を担当したのは「パラサイト」の撮影監督だったホン・ギョンピョさん。文と更紗の心象風景を表す自然の風景はもちろん、風や優しい光が感じられる映像がとても美しくて、うっとりした。とくに湖のシーンは忘れられないものになりそう。

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役者は、更紗の少女時代を演じた白鳥玉季ちゃんと、更紗に酷い暴力を振るうことでしか愛情を示せないDV彼氏を演じた横浜流星が素晴らしかった。

広瀬すずが演じた更紗はピチピチと健康的で可愛すぎたなー。もっと崩れて荒んだ更紗が見たかった気も。

そして何といっても凄かったのは原作の文そのものだった松坂桃李。終始目の演技、感情がマグマのように激るラストで見せる演技に圧倒されて、瞬きもできなかった。

とてもハードな内容なので2時間半ずっと心を持って行かれてなかなかしんどい作品なのだけど、もう一度映画館でじっくり見返したいと思っている。 

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さいごに。

文が営むカフェの雰囲気が好きだった。調度品はすべてアンティークショップで揃えたと思しき古いもので揃えていて、奥にある窓からは川が見えて。

珈琲のお湯がしゅんしゅん沸く音と客がページをめくる音しか聞こえないような、静かなお店。

そのカフェの名は《Calico》=更紗。