東京スピリチュアル一泊旅行のもう一つの目的。
それは青山スパイラルで開催されていたミナペルホネン の展覧会『 風景の色 景色の風 / feel to see 』を見ることだった。
2019年から東京・神戸で開催されてきた『つづく展』の締めくりのような展覧会で、両方に足を運んだ私としてはフィナーレも見届けたかったのだ。
ミナの洋服は生地を一から作ることからはじまるということは知られていると思うが、今回はミナの肝と言えるテキスタイルに焦点を当てた展示だった。
最初に目に入ってきたのは、天井からカーテンのように吊り下げられた幾つもの生地が、まるで緞帳のように上がり下がりする『Ocean』と名付けられた作品。
長い生地が上下する様子を見上げていると、色の組み合わせの美しさや刺繍の技術のすごさに改めて見惚れてしまうのはもちろんのこと、生地の群れが本当に海原のように見えてきて不思議な気分になった。
回廊がある天井の高いスペースにカーテンのように下げられた「Forest gate」という名のテキスタイル。
冬の森に分け入ろうとしているオレンジ色に発光する熊と広大な森を表現したこのテキスタイルに、私にとって馴染み深い冬の闇の静けさや雪の温かさ(この感覚を知っているのは雪国の人間だけだが)を感じた。
ミナには自然を描いたテキスタイルがたくさんあるが、
これは北海道の景色ではないかと錯覚してしまう時がたびたびある。
モニターに映し出された様々なテキスタイルがアニメーションのように動く作品、『motion』。
鳥のさえずりがサンプリングされたエレクトロニカミュージックが耳に心地よく届く。
樹木をイメージしたと思われる、木枠に囲まれたモニター。こんな優しいデザインのテレビがあったら欲しい。
木の実をくわえた鳥が描かれたテキスタイルを見ていた時に、右側の画面にいた鳥が左側に飛び移るなど、かわいい仕掛けもあって飽きさせなかった。
反対側のフロアは予約不要で、初期の頃の洋服や小物、椅子などが展示されていた。
懐かしいけどいつまでも古びないなぁと感じた。
実際自分のクローゼットに並ぶミナの服を思い浮かべても、これはもう時代遅れだなぁと感じるものがひとつもない。
体型を維持し(これが一番重要)合わせる小物を変えていけば、ミナの洋服はずっと着られる。
洋服も自分と一緒に少しずつ年を重ねていくのだ。
それはとても楽しみなこと。
スパイラル玄関横のガラス張りのスペースでは、デザイナーの皆川明さんが少しずつ描き足している絵を見ることができた。
残念ながら皆川さんはこの日は不在だったが、何やら怪しげで楽しげな空想の動物たちの世界が広がっていた。
スパイラルを出て少し時間が余っていたので、久しぶりに神宮前の小さな本屋「ユトレヒト」に寄ることにした。
ちょうどこの日はギャラリースペースで堀道弘さんの漫画「俺は、短大出」の出版記念の展覧会をやっていた。
原画が無造作にぶら下がる学祭的な雰囲気にワクワク。
写真は、堀さん所有のブッダマシーンコレクション。
ブッダマシーンもそうだけど、自分はやはり万人に受けるものではない誰かの大切なものや、個性的で手づくり感のある書物、アートワークなんかを見るのが好きなんだと思った。
短い滞在だったがやはり東京は楽しい。
大いに刺激を受け、帰ってあれこれ作りたくなった。