小林エリカさんの絵本『わたしは しなない おんなのこ』(岩崎書店)を、タイトルと表紙だけで直感で購入を決めた。
ページをめくるのがこんなに楽しみな絵本に出会ったのは久しぶりだった。
お話はこんな感じ。
死ぬことが怖かったひとりの小さな女の子は、あるとき歌を歌います。
「わたしは しなない おんなのこ〜♪」と。
台所へやってきたねずみがその歌を気に入り、おなじように歌い出しました。
やがて女の子は歳をとり、おばあさんになって死にますが、鼠算式に増えたねずみたちが、この歌をこねずみと一緒になって町中で歌いまくります。
ねずみを食べようとした猫、ねずみのお尻にくっついていたノミたち、そしてウナギも…
こうして歌は次々とあらゆる生き物たちによって歌い継がれるのです。
それからいくつもの年月が経ち、歌はやがて遠くの街のアパートにいる女の子の耳にも届きます。。。
著者の小林エリカさんはこの絵本を、アンネ・フランクの日記に書かれていた「わたしの望みは、死んでからもなお生き続けること。」という一文から着想したのだという。
おんなのこ(アンネ)の肉体は消えても、いつか誰かがその歌(日記)を知り心を震わせ、歌い継いで(読み継いで)いるのだ。
だから、おんなのこ(アンネ)は《しなない おんなのこ》として、死んでからも人々の心に生き続けるのだろう。
この絵本には、教訓も涙を流すような感動もない。死について書かれているけど、なんだかフワフワしていて不思議なお話だし、受け取り方によっては難解な内容だ。
小さな子どもにはどんなふうに伝わるかな。
いつか読み聞かせの機会があれば、読めたらいいな。
漫画家でもある小林エリカさんの絵のタッチは、力強さと脆さの両方を併せ持つ独特の雰囲気がある。
ガーリーという言葉で片付けたくはないのだけれど、ネオンピンクやネオンイエローで彩色されたページは絵本には珍しいし、たまらなく大好きな世界だ。
それに、絵本にヘビが登場したことはあったけど、ウナギが登場したことって今まであっただろうか?なぜウナギなんだろう?
それについて彼女が書いたコラムを見つけた。それには、精神科医であった著者のお父さんの生まれ年が、アンネ・フランクが生まれたのと同じ年だということと、アンネの隠れ家があったプリンセン運河通りのアムステルダム川には当時も今もウナギがいるということから、絵本にウナギを登場させたということだった。
「わたしは しなない おんなのこ」は、谷川俊太郎さんが命名した《死をめぐる絵本シリーズ「闇は光の母」》の第一弾として出版された絵本だ。
(ところで闇は光の母って、素敵な言葉だ。さすが詩人。)
この秋以降、さまざまな作り手により順次発売されるそうなので、とても楽しみだ。