風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

和田誠展 東京trip ①

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5月以来の東京ひとり旅。

モノレールの窓から見える秋の東京の景色は、空気が澄んでクッキリ見える。この季節にいつも思うことだが、緑と無機質なビル群に雲ひとつない秋の空がセットになったこんな光景は、ホンマタカシが撮る東京の写真のようだ。


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朝一番の飛行機でやってきたので腹ごしらえはサラッと神田のやぶ蕎麦で、と思ったが、早すぎて開店前。今回の食事は老舗シリーズで決めたかったので、新宿ルミネ地下街のベルクへ向かうことにした。

朝からうまいビールが飲めて、安心安全な軽食が楽しめるベルク。特に手づくりのベーコンやハム類は日本一旨いし、信じられないくらい安い。そして気持ちの良い接客。音楽もいい。この時は細野晴臣さんの「さよならアメリカさよならニッポン」が流れていた。

東京イチのカフェ&バーだと思う。


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今回は、2019年に亡くなったグラフィックデザイナー、和田誠さんの展覧会が見たくてまず初台のオペラシティーギャラリーへ。


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入ってすぐ。有名人のポートレートが壁一面に展示されていた。徹子さんの背景にはやっぱりピンク色が似合う。


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幼い頃からの落書きや日記などが時系列で紹介してあった。今の息子と同じ18歳だった時に描いた漫画。やっぱりセンスあるよなぁ。


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映画《怪盗ルビィ》で監督を務めたとき、ヒロインはキョンキョンだった。かわいくてポップで大好きな映画だが、和田さんはのちにもキョンキョンの本の装丁を手がけている。

奥さまの平野レミさんもそうだけど、和田さんはこんな無敵のパワーを持つ明るい女の子が好みなんだろうな、って思う。


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和田さんといえば週刊文春の表紙を毎週描き続けたことでも知られている。40年分の表紙が天井までずらり並べられたコーナーは圧巻だった。

その中でもお花を描いたシリーズが、柔らかくて好き。

父がこの雑誌を毎週、手で丸めて会社から持ち帰り、テーブルにポンッと置いてたのを思い出す。 

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舞台のポスターも本当にたくさん手がけていたんだな。

演劇や映画や音楽を愛していた和田さん、どの仕事も楽しんで受けていたのだろうなと感じさせる軽く洒落たタッチだ。ユーモアが加えられているのも良い。


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このポスター、和田さんだったんだ。

子どもの頃から見ていたような気がする。


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そして、多くの企業からデザイン依頼を受けて作成されたロゴマークは、それを目にする地元の人たちから長く愛されている。わが街札幌の、すずらんマーク。

東京都民に自慢したい気分になった。

 

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広い大地にどっしりと立つ柏の木。

白い空間は澄んだ北海道の空気を、丸は地球を表しているという。道民なら誰もが知っている、食と農業を担うホクレンのマークだ。


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代々木上原の古本屋、ラスパペロトス。

好きなお店のロゴマークが和田さん作と知れて嬉しかった。
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ローズバッドも!


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え?私?


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愛妻家だった和田さん。料理家であるレミさんのためにデザインしたメガネがかわいくて、レミさんに似合うだろうなぁと想像して、ほんわかとした気持ちに。


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そしてセーターまでデザインしていたことに感動。野菜がいっぱい編み込まれた素敵なセーター。こんなセーターをデザインしてくれる旦那さんなんて、最高だな。

レミさんが何を作っても「美味しいね」と一番に褒めてくれ、幼かった2人の息子の描いた絵を集めて一冊の本にするくらい家族を大切にしていた和田さん。

仕事では最後までコンピューターを使わず手描きにこだわった和田さんの残した作品から、圧倒的な「優しさ」が伝わってくるのは当然のことなんだなぁと感じて、なんだかしんみりしてしまった。