風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

2021秋冬《嘘ミドラマ大賞発表》

10月スタートのドラマ、今回は10本を視聴し始めたのだが「2月の勝者」からは残念ながら脱落、それ以外の9作品は最終回まで完走した。

引き続きのコロナ禍、各テレビ局制作陣がしのぎを削って質の高いドラマを見せてくれたことに心から感謝。

もちろん日本が誇る素晴らしい俳優たちにも!

 

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ブコメで一番好きだったのはこちら。

視覚障害者の高校生ユキコ(杉咲花)とヤンキーの森生(杉野遥亮)のラブストーリー「恋です!ヤンキーくんと白杖ガール」(日本テレビだ。

ピュアなふたりの恋愛模様がかわいくて、誰もが一生懸命生きていて、障がいを持つ人やジェンダー問題にも嫌味なく真実に触れ、悪意がひとつもなく、愛の世界を描いたドラマだった。

杉野遥亮は今まで脇役が多かったが、この作品ではついにブレイク。真っ直ぐでバカなヤンキー・森生が当たり役だった。杉咲花の演技力は今更語るべくもないけど、笑顔が本当に素敵で、ユキコの心の美しさや強さが透けてみえた。

 


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「最愛」。(TBS)

真田梨央(吉高由里子)と、彼女の初恋の相手であり事件の真相を追う刑事(松下洸平)、そして、あらゆる手段で梨央を守ろうとする弁護士(井浦新)の3人を中心に展開するサスペンスラブストーリー。

過去に辛い記憶を持ち、男性に守ってあげたいと思わせる女性をやらせたら吉高由里子、ほんと一級。私も守ってあげたくなった。

そして役者としての井浦新が振り幅最強で、今回もとてもよかった。

ここ最近のドラマでは「にじいろカルテ」での明るくて頼り甲斐のある兄貴分の外科医、そして「あのときキスしておけば」での松坂桃李の恋人・キュートなオジ巴を演じた井浦新。役によって印象ががらっと変わるところが見事。

今回は梨央(吉高由里子)を庇護したい一心で自己を犠牲にする生き方をしてしまったのが悲しすぎた。

登場人物それぞれが「最愛のひと」を守りたいという気持ち。それが仇となり壮大なミステリーを生み出すという、練られた脚本は最後まで飽きさせなかった。

 


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「婚姻届に判を捺しただけですが」(TBS)

仕事人間の明葉(清野菜々)と百瀬柊(坂口健太郎)。

偽装結婚をしたカップルが本当の夫婦になるまでの、風変わりな関係を描いたドタバタラブコメディー。

百瀬(坂口健太郎)は仕事ができる広告会社の営業マン。しかし女心を読むのが恐ろしくヘタで不器用。前NHK朝ドラの「おかえり、モネ」での菅波先生とキャラがかぶっていたが、“俺たちの菅波“が民放に帰ってきたみたいで嬉しかった。

ただただ、かわいい坂口健太郎を愛でることを楽しんだドラマであった。清野菜々のオンザ眉毛と笑顔も最高。



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日本沈没ー希望のひとー」(日本テレビ

うーーーん。何度も実写化されている小松左京の面白すぎる小説であるにも関わらず、そして豪華すぎるキャストを使っているにも関わらず、リアルさに欠けてどこかチープ感漂う作りだった。

このドラマは息子と観ていたのだが、もう途中から二人で台詞にツッコミ入れたりキャラいじりして、笑いながら見てしまった。

 

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最初は老害でしかなかった副総理・里城(石橋蓮司)が後半はめっちゃ頼りになって日本の危機のために骨身を削る姿がカッコ良かったので、個人的に里城先生に助演男優賞さしあげちゃう。


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「真犯人フラグ」(日本テレビ
突然失踪した家族の謎を追うサスペンスミステリーだが、登場人物の誰もがあまりにも無節操に怪し過ぎて、考察するのを最初から放棄して見ている…。

悪意に満ちた演出が多くてちょっと疲れる。

このドラマの企画・原案は秋元康氏だそうで。私、昔から彼を胡散臭く思っていて、信用していない。

ドラマ全体にどこか誠実さが感じられない(視聴者を翻弄してやろうという意図が見えすぎて)のはそのせいか。

 

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唯一キャラが安定している刑事の阿久津(渋川清彦)。

彼が毎回披露するくだらない小噺と独特の言い回しが癖になり、今では私と息子にとっての変な癒しになっている。

「真犯人フラグ」はお正月明けには第2クールを迎えるのだが、果たしてドラマは面白い展開になるの、ならないの、どっち?!

 

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「スナックキズツキ」(テレビ東京

傷ついた人が扉を開けてしまう不思議なスナック「キズツキ」。ママのトウコ(原田知世)はお酒が飲めない。だからお酒を出さないスナックなんだけど、そのかわりトウコさんが作る手作りの飲み物や、温かい出来立ての食べ物が毎回とっても美味しそう。こないだは出来立てのシュークリームを食べるシーンを見てたまらなくなり、近くのセブンイレブンに買いに行ったほどだ。

そして時には一緒にタップダンスをしたり、楽器を演奏しながら歌ったり叫んだりしているうちにストレスも傷もほんわか癒されて、家路に向かうお客さん。

毎回、見ている私もふわっと優しい気持ちにさせられる。客のことを「あんた」と呼び「いらっしゃい、コーヒー飲んでく?」「今日もおつかれさん。」と言ってくれるトウコさんの飾らない優しさが沁みる。

そしていつもお客を癒やしてあげる存在だったトウコさんが、自身の過去の傷について話し、それを浄化させるという最終回にはジンときた。

 

あとから気になって益田ミリの原作マンガを立ち読みしたのだが、ものすごくシンプルで淡々としたお話だった。それを、脚本はもちろん、優秀なドラマ班と個性豊かな役者たちの手によって、まるで童話のようにファンタジックな世界に仕立てあげていたことを知ってびっくりした。

 


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☆嘘ミ的2021秋冬ドラマ大賞その1☆

アバランチ」(カンテレ)

謎のアウトロー集団“アバランチ”が、権力を我が物にしようとする巨悪と闘う物語。

映画「ヤクザと家族」「新聞記者」などを監督した藤井道人が脚本や監督に携わっていて、

オープニングのタイトルバックからアクション、映像の美しさ、カットの斬新さ、もちろんストーリー展開すべてがテレビドラマを完全に超えた映画のクオリティだった。

 

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リーダー・羽生役の綾野剛がかっこよすぎて毎回唸った…息子もそうだったから《男が認めるイイ男》なのだろう。

普段はそんなにイケメン風情を出していないのに、映画やドラマとなると途端に男臭さが爆発する綾野剛浅野忠信と同じ危険な匂いを感じる。

得意分野が違う有能なアバランチのメンバー全員にも味があり、各々の人生の物語を丁寧に描いていたところも良かった。

とくに2人の女優、元自衛隊の特殊部隊の経歴を持つリナ(高橋メアリージュン)の鍛えまくったボディ&アクション、それと警視庁の山守(木村佳乃)の悲しみや怒りを内包させたクールな演技がとてもよかった。

アバランチの活躍を通し、政治家、官僚、大企業といった富と権力を持った“強者”だけではなく、ネット社会の弊害など一般市民が無意識に放つ罪に対しても「正義とは何か」を問う骨太なドラマだった。


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☆嘘ミ的2021秋冬ドラマ大賞その2☆

「和田家の男たち」(テレビ朝日

アバランチ」とは全く違う路線ではあるが、まるで舞台を見ているかのような台詞回しの面白さを楽しめた「和田家の男たち」が、「アバランチ」と並んで今期の嘘ミ的ドラマ大賞だ。

元新聞記者の祖父(段田安則)、テレビの報道局員の父(佐々木蔵之介)、そしてネットニュース記者の息子(相葉雅紀)。

そんなマスコミ三世代の男たちが一つ屋根の下に暮らす物語。

ドラマ後半は優の母親・りえ(小池栄子)の死の謎を追うシリアスな展開になったが、作品全体は軽妙洒脱な雰囲気で、ウディ・アレンの映画のよう。

祖父や父が自由に恋愛し、別居婚という形をとるところも自由で素敵だなぁと思ったり。

段田安則佐々木蔵之介という名優を相手にいつでも穏やかなテンションで応じた相葉雅紀。動物好きで料理が得意、人柄の良さが滲み出ている相葉くんの演じた「優」はたぶん脚本家・大石静さんがあて書きしたのだろう。 

倫理観も価値観も違う三人の男をひとつにしていたのは、一家の食事係である優くんが用意する温かいごはん。いつもテーブルにはアイデアが光る家庭的なメニューが並び、それがとても美味しそうだった。「優クンの台所」というInstagramもあってレシピが公開されていたので、和田家の味が何度か我が家の食卓にも上がった。

そして劇中では出演者みんながマスクをし、物語は過去でも未来でもなく現在進行形だったので、より和田家に親近感を覚えた。

またそんな和田家の三人の男たちが、日々起こるニュースに対してそれぞれのメディアの立場から意見を闘わせることで、今の世相を表現していた点も面白かった。


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そして最後に今期の「ほっこりドラマ賞」を

「サムライカアサン」(日本テレビに差し上げたい。

ひとり息子のタケシ(大西風雅)が可愛すぎるばかりに世話を焼き過ぎてウザがられる、愛情たっぷりの大阪のオカンをTOKIOの城島リーダーが熱演。

もう!リーダーが普通の姿でいるのをテレビで見たら「なんで男装してるの!」って逆に思うってしまうくらい、オカンでいるのが自然だった。

タケシが独り立ちする最終回ではオカンと一緒に咽び泣き。

やっぱり私も“息子大好きオカン“。このコッテコテな「なにわの母子」の姿を、涙なくして見ることは出来なかった。