風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

余命10年

 

f:id:usotomishin:20220307231334j:image

「余命10年」。

あまりにも直球なこのタイトルを見た時「また恋人が不治の病で死ぬ系の映画か〜」と思った。

なのになぜ観に行ったのかというと、それは映画「新聞記者」やドラマ「アバランチ」(演出)などの藤井道人さんが監督だったからだ。

そして脚本は大好きだったドラマ「泣くな、はらちゃん」「にじいろカルテ」、いま楽しみに観てるドラマ「ファイトソング」の岡田惠和さん。

あ、坂口健太郎が主役というのもポイントだった、正直に言うと。


f:id:usotomishin:20220307231341j:image

 

「余命10年」は、重い肺の病気を持つ茉莉(小松菜奈)と恋人・和人(坂口健太郎)との出会いと永遠の別れまでの10年を綴ったラブストーリー。

もし自分が20代で、好きな人がいて、10年という命の期限があったとするなら、本当に辛いことだろうな。恋人や家族との大切な一瞬一瞬をこの胸に焼き付けておきたいって思うだろう。

狂おしいほどの桜吹雪や、きらめく海辺の水しぶき。二人で歩いた銀杏並木。最初で最後のスキー旅行…

約一年をかけて撮り続けたという、スクリーンいっぱいに映し出される四季の自然の景色がとても美しかった。すべて恋する茉莉の目を通して見た光景なのだろう。

 

父(松重豊)と母(原日出子)、そして姉(黒木華)。悲しみを隠しながら茉莉を支える家族の姿にも、私も親として感情移入せざるを得なかった。

とくに感情のピークが来たのは、お母さんがキッチンで美味しそうな湯気を立ち上げながらポトフを作るシーンだった。ずっと堪えていた茉莉が初めて感情を露わにし、お母さんにすがりついて「死にたくない」と言って子どものように泣くのだ。当然、涙腺崩壊。

 

子犬のように無垢な瞳の、草食系男子を絵に描いたような和くん(坂口健太郎)。最初は自殺未遂をおこすほど腐ったプー太郎だった彼が、茉莉のおかげで少しずつ男としてたくましく成長していく様子は死にゆく彼女とは対照的で、それも悲しかった。

 

そして二人を温かく見守る居酒屋のおやじ役でリリーフランキーが出ていた。

ちょっとした邦画でちょくちょく見かけるリリーさん。居酒屋のおやじ役が似合いすぎる。

 

それにしても、今までカッコいいモデルとしてしか認識していなかった小松菜奈が、素晴らしかった。

こんなに美しく瑞々しく命の尊さを表現するとは。スクリーンでこそ輝く女優だと思った。

「糸」もいつか観てみよう。