風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

忘れた頃に阿部サダヲ

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だいぶ前になるけれど、13年ぶりに監督業に復活したレオス・カラックスの「アネット」を映画館で観た。

人気スタンダップ・コメディアン(アダム・ドライバー)とオペラ歌手(マリオン・コティヤール)。その二人の間に生まれた娘アネットの波瀾万丈な人生をロック&オペラなミュージカル仕立てで描いた風変わりな映画だった。

もったりとした顔がやっぱり苦手だわ〜なアダム・ドライバーは「HOUSE OF GUCCI」に続いてまたもやサイコパスなDV男を演じていた。

物語前半、恋に落ちたふたりが森の中を駆け抜けるシーンは私の大好きなジャック・ドゥミの「ロバと王女」の世界を彷彿とさせ、70年代フランス映画のような雰囲気でステキ!と思った。

しかし後半、夫婦関係が壊れてからは悪夢のようにドロドロとしたおぞましい展開に。

レオス・カラックスのベスト作品は、なんといっても情熱の塊みたいな映画「ポンヌフの恋人」だよなぁと思い出し、また見返したくなっている。

 

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「アネット」のあと、立て続けにサイコパスな男が主人公の映画を観た。

20人もの高校生を次々に手にかけた連続殺人犯を阿部サダヲが。そして事件の真相を巡って犯人に翻弄される大学生を岡田健史が演じた。

とーにーかーくー、サダヲのやることが残虐すぎて、冒頭10分で「こ、これは直視できん!」状態に。

大抵の怖い映画に耐性のある私なのだから、よっぽど酷いと考えてもらってよい。それに監督は躊躇なき残酷シーンでおなじみの「孤狼の血」シリーズを撮った白石和彌さんだ。サダヲの演技と監督の演出が怖すぎて、ある意味、孤狼の血の方が平気じゃない?って思った程だ。

しばらくはテレビで阿部サダヲを見かけるたび「ヒーッ」と震えてきて仕方がなかった。それくらいサダヲのサイコパスな目と、一筋縄ではいかない練られたストーリーが見事な映画であった。


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つい先日、NHKで始まった連ドラ「空白を満たしなさい」をどれどれと視聴していた。

自殺を疑われたまま亡くなった男・土屋(柄本佑)が3年後に突然生き返って、妻(鈴木杏)の前に現れる。

自身の死の真相を追うヒューマンサスペンスということで、よくある「黄泉がえり」の話でスピリチュアル寄りなのかなぁと少し眠くなりながら見ていた。

が!華麗な蹴りで鳩を瞬殺する警備員「佐伯」が登場した瞬間、目が覚めた。阿部サダヲだ!

 

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「佐伯」が主人公の死に深く関わっていることが分かった瞬間、ドラマの空気がガラッと変わった。

黒目に光はなく、幸せそうに笑いながら狂った台詞を喋るサダヲの姿に背筋が凍った。

原作は平野啓一郎の小説。脚本は「死刑にいたる病」と同じ高田亮さんだ。不穏さを煽る音楽もいい。

いやぁ、サダヲの登場で先が全く読めなくなった。このドラマが俄然楽しみになってきた!