風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

ベイビー・ブローカー

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あまり客足が伸びていないと見えてあっという間に上映回数が減らされてしまった。

是枝裕和監督作品『ベイビー・ブローカー』。

韓国の大スターたちを是枝さんの脚本で撮るとどうなるの?と興味津々だった映画を、観に行くことができた。

 

孤児院の赤ちゃんポストに置かれた赤ちゃんを売買するブローカーたちと、赤ちゃんを手放そうとしながらも諦めきれない母親、孤児院から付いてきた8歳の男の子。そんな彼らを現行犯逮捕しようと追う2人の女刑事をめぐる風変わりなロードムービー

全員主役級の韓国の大スターを起用しての華やかな逃避行劇、となるところが、是枝監督だからか時に眠くなるほど淡々と物語が進む。

多額の借金を抱えながらクリーニング店を営むサンヒョン(ソン・ガンホ)が副業でブローカーをやっている背景は分かったが、彼が最後はどうなったのかがよく分からないままだったし、相棒ドンス(カン・ドンウォン)が赤ちゃんの母親であるソヨン(イ・ジウン)を好きになる過程ももうちょっと丁寧に描いて欲しかった。他にもところどころ??な点がいくつかあって。(私が寝てたのか?)

それと役者たちはもちろん上手いと思うが、ことばが韓国語なのと文化的背景が日本と違うのもあって、是枝監督の台詞(脚本)がいまいち馴染んでいなかったような気がした。だからこの映画の肝である母親ソヨンのセリフ「生まれてきてくれてありがとう」が私にはそれほど沁みてこなかった。

なかなか養子縁組が成功しないまま旅は続き、最後に赤ちゃんは一番ベストな場所に落ち着く。それがもう、ハッピーエンドというよりはファンタジーの世界になっていて。よいのかな?よいのだろうな。現実ではなかなか無いラストで。だって映画だからな。

少子化、貧困化が進む日本ではこれから益々子どもを産み育てることが大変になっていくだろう。望まぬ妊娠をして捨てられる子どもはもちろんのこと、血がつながっていようが無かろうが、他人の子どもも社会全体で育てようよという空気がもっと広がるといいと、この映画のラストを見て感じた。私にはその気持ちの準備はある!

はよ変われ日本のシステム。男たちの意識。

 

あ、これは余談だが、映画の中での食事のシーンについて。とくに張り込み中の女刑事たちが車中で食べ物を口に入れながらお喋りしたり、くちゃくちゃ盛大に音を立てながら食べるのが気になった。私は韓国ドラマや映画をそれほど見ているわけではないけど、どんなにきれいな女優たちでも食べるシーンはいつもそんな感じだ。韓国ドラマに詳しい友人に聞いてみたら「韓国ではそれはタブーではない」とのこと。国が違えば習慣も違う。面白いなぁ!

 

あと「空気人形」で完璧ビューティードールだったペ・ドゥナ(今回は女刑事役)が、歳を重ねても美しい首筋と顎のラインをキープしていることにもちょっと感動した。