十和田から2時間ほど車を走らせ、弘前に移動してきた。街としては青森市や八戸市の方がずっと栄えているが、弘前で古い洋館や教会が見たいと思ったのだ。
映画のセットかと思うような立派な日本家屋。実業家、藤田謙一氏個人が大正時代に建てた別荘だ。
藤田記念庭園。きれいに整備された広大な日本庭園はのんびり歩くのにぴったりな場所だった。京都のお寺を歩いている時のような静けさがあって。
見事な庭園を歩きながら目指したのは、同じ敷地内にあるこの洋館。
三角屋根の洒落たこの建物のなかに「大正浪漫喫茶室」(←ベタな店名)というカフェがあった。
テラス席の角という特等席に案内してもらい、足を伸ばしてほーっと深呼吸。
やっぱりアップルパイを頼まなくては。深煎りのコーヒーとともに。
アップルパイのパイはバターたっぷりで、中にはちょうどよい甘さのサクサクしたりんごがぎゅっと詰まっていた。トロトロのりんごの方が本当は好みだけど、りんごそのものがフレッシュで美味しかった。
弘前にはたくさんのアップルパイ専門店があり、このカフェでは10店ほどお店のアップルパイから、好きなものが選べるようになっていた。
それにしても、弘前の街は人が少ないものあるけど、どこを歩いていても静かだと感じた。田舎町にありがちな音声広告も聞こえてこないし、道案内をしてくれた優しいおじさん達も立ち寄ったお店の人たちも皆穏やかな物腰で、動作がゆっくりな気がした。
都会の人たちはいつも何か急いでる感じがするから、その違いが心地よかった。
弘前市立図書館。この建物が現役で市民に使われているのが素晴らしい。こんなロマンチックな図書館に出入りして本を選んだり勉強したりできるなんて。
いい感じのパブを何軒か見つけた。
弘前で、スナックを改造した面白いホテルに宿泊して飲みに行く計画もあったので、そうだった場合はこのパプに寄っただろうな。
その夜の楽しさが容易に想像できた。
こぎん刺しの小さなブローチを買った雑貨店「green」。ギャラリーのような美しいディスプレーで伝統工芸品を並べるセンスのよいお店だった。
この店のすくそばに児童文学にでも出てきそうな、丸ごと宝箱のようなアンティークショップがあった。もしもこの町に住んでいたなら、通って大事にしただろうと思わせる小さなお店がいろいろある。
焼き鳥屋やうなぎ屋、居酒屋が並ぶ飲み屋通りにあって少し迷い、やっと辿り着いた「まわりみち文庫」。
甘く香ばしい美味しい匂いが漂う夕暮れの小径。
高田渡やはっぴいえんどが似合いそうな佇まいの書店だったが、中に入るとSKA、しかも自分も好きなspecialsが流れていたので身体が揺れた。
音楽、映画、奈良さんや棟方志功、東北民藝系の美術書はもちろん、サブカルから元オリーブ少女たちが好きそうなお料理本や生活本も。
新刊と古書がジャンルごとに丁寧に並べられた小さな店内にはあたたかな空気感があって、思った通り好きな書店だった。
ちょうど旅行中に猪木さんの訃報が飛び込んできたのもあり、プロレスファンの夫にお土産としてこの雑誌を購入した。めがねをかけた優しい男性店主に奥から出してきてもらって、猪木さんが一番かっこよく写っていると思った一冊を選ばせてもらった。
自分用にはこちらを。
日本の珍スポットや奇人変人を取材する金原みわさんの「さいはて紀行」。(シカク出版)
人の通りも本当に少なくて、街としてはきっと寂れているんだろう。だけど弘前は小樽や函館にも似た情緒のある町だった。
おまけ
《レンタカーの旅はよい。》
空港に着いたら車を借りて、重い荷物を気にせずどこへでも自由に行けるレンタカーのひとり旅は、歌ったり好きなところで停車したり、気楽で本当に楽しかった!
今回私が借りたのはトヨタのヤリス。今までマイカーとして歴代のヴィッツを色違いで3台運転してきたので、その進化版であるヤリスは馴染みがあった。
新型ヤリスは小回りが利きステアリングも軽く、何より加速にパワーがあってコーナーリングも安定感があり、運転が楽しかった。低燃費なのも助かった。
青森は観光地間が結構離れているので、時短のためにも車が便利だった。もちろん東京や大阪、福岡などの大都会の旅は公共の交通機関を使った方が良いけど。
これからはレンタカーでいろいろな地方都市を周るのもいいなぁと次の旅が楽しみになった。