北海道にまた緊急事態宣言が敷かれてしまった。それにより美術館が閉鎖され残念だが、なぜか映画館はやってくれている。
だいたい、もともと喋らずに済み、北海道はほとんど密にもならずに過ごせる文化施設を閉じるなんて何ということだ!と思う。もちろんそれだけでなくコロナ対策やオリンピック開催問題に対する政府や道のやり方を見ていると、大多数の皆さんと同じで怒りが湧いてくる。
それはさておき、桃李くんが出ているというだけで観ておきたいなと思っていた、この渋めな映画『いのちの停車場』。
半額でムビチケを買えたというのもあり、さっそく観てきた。
だいたいのストーリーはこうだ。
東京の救命救急センターで働いていた医師・咲和子(吉永小百合)が、ある事件をきっかけに故郷の金沢で仙川先生(西田敏行)が経営する「まほろば診療所」で訪問診療医として再出発をする。
命を送る現場に咲和子は戸惑う事ばかりだが、老老介護、四肢麻痺のIT社長、小児癌の少女......様々な涙や喜びを通して在宅医療を学んでいく…。
死と向き合い葛藤する患者たちを、小池栄子、泉谷しげる、柳葉敏郎、石田ゆり子、南野陽子ら豪華なキャストが演じていて、登場するたびいちいち「おお」と思うのだが、命が消えていく過程の描き方があまり丁寧では無いので、少し残念。詰め込みすぎ感あり。
NHKあたりのテレビドラマで一話ずつ観たい。
だが、在宅終末期医療現場の辛いシーンがほとんどの中、まほろば診療所の若い看護師の星野(広瀬すず)と運転手で医大卒の野呂くん(松坂桃李)の存在はフレッシュで、希望の光だった。
それにしても西田敏行が車椅子に乗っていると、どうしてもまだ「俺の家の話」のジュジュに見えちゃって、ちょっと笑ってしまう。
そして咲和子の父親を演じていたのが田中泯さん。
泯さんといえば、私の大好きな映画「メゾン・ド・ヒミコ」でのゲイの老人役がとても素敵だったのだが、今回改めてやっぱり凄い役者だなと思った。
骨折をきっかけに病に冒され、脳梗塞から発した神経性疼痛で娘の在宅看護を受けるようになったお父さん。
想像を絶する痛みと闘う日々の中、最後は娘に「安楽死」を懇願するのだが、その迫力たるや。完全に小百合を食っていた。
役作りのため75歳で5キロ以上も体重を落としたというその姿と鋭い目には凄みを感じたし、どんなに痩せてもシルエットが凛として整っているのは、やはりダンサーだからなのだなと感じた。
しかし映画の全体的な印象としては、華やかなキャストを脇に揃えた「ザ・吉永小百合劇場」という感じ。
吉永小百合の映画をまともに見たことがなかったので、こんな感じなんだ、と新鮮ではあった。
金沢の四季折々の景色はとても美しい。
食事のシーンも毎度温かくおいしそうで、久しぶりに治部煮が食べたくなった。