
雨粒シャワーを浴びたあとの木々の葉がきらきら光る午前11時の代官山。
ミナペルホネン設立30周年記念の展覧会を見るためにヒルサイドギャラリーon the hillへ。
坂道を上って見えてきたのはキャラクターガールのenkeli(天使)ちゃん。
「羽花」
minä Perhonen 30th anniversary exhibition
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akira minagawa art works
開場したばかりの柔らかな光が差し込むギャラリーに皆川さんの姿を発見。来場者ひとりひとりに優しく声をかけてお迎えしてくれていることに、毎度ながら胸打たれる。
昨晩は遅くまで周年パーティーだったのでお疲れだろうに…
「羽花展」の会場は、ブランド創設者でデザイナーの皆川明さん個人のアート作品が展示された「art works」のコーナーと、ミナの活動を振り返る「30th exhibition」のコーナーの2部構成になっていた。

皆川さんの art workはアクリル画、陶芸、エッチング、リトグラフにオブジェと多岐に渡っていた。
忙しいデザイナーとしての仕事以外にいつこんなに制作をされていたのかと驚く。

陶芸作品。木や鳥やゾウといったモチーフがまるでおいしそうなクッキーのように見える。

動植物や人間をモチーフにしたものから、また抽象画などの作品からも、幸せやユーモア、それに平和、安らぎといったキーワードが浮かんできた。

すごく気になりじっと数分見つめていたのはリトグラフ作品「fate」。
自分と小さかった頃の息子の姿を写しているような気がして胸がきゅんとなったのだ。
展示作品は全て販売もしていたので、こんな素敵な絵が家にあったなら…と想像したが、ミナのコートが一着買えるくらいの価格だったので即決はできなかった。
いつかタイミングが来たら、皆川さんの絵を自宅に飾りたい。

さて、もうひとつの展示コーナー「30th exhibition」のコーナーには30体のトルソーが並んでいて大迫力だった。トルソーには歴代のコレクションの中から1年につき1着が選ばれており、それに新旧混ぜ合わせたアイテムがコーディネートされている。

1995年のドレスにも2025年の最新コレクションのブルゾンにも、年代や流行りをほとんど感じさせないところがすごい。

年代の違う洋服同士はもちろん、ミナの服は色や柄をミックスして着こなすことができる。
幸せや喜びのオーラしか発していない洋服たち。だから好きなんだと再確認した。

半年に1度、ひとつずつ発表される鳥のバッグもミナを代表するアイテムだ。

さまざまな素材、手法、アイデアが詰め込まれていてこれは「持ち歩くアート作品」と言えるだろう。実際入れるものを厳選しなければならないので、使う時と場所を考えなければならないバッグだ。でも愛しいtori bag。

この黄色ちゃん、発表された当時欲しかったのを思い出した。ツルピカしたエナメル素材のかわいい子。

グレゴリオ聖歌の荘厳な旋律が空間を漂う中
すべての作品を丁寧に鑑賞しているうちに湧いてきたのは、深い感謝の念。
ひとつのブランドが10.20.30年とずっと私をときめかせてくれていること、同じ時代を生きていられることへの喜びでいっぱいになる展覧会だった。

さて展覧会のあとは吉祥寺へ移動し、古くからの友人との待ち合わせまで少し時間があったのと、お腹が空いたので「ねぎし」に駆け込んだ。
そして汗を拭き拭き牛たんとお米を少しだけいただいてから、懐かしのパン屋さん「dan dix ans」(ダンディゾン)へ向かった。

2003年に生まれたこの建物は、2階にギャラリーフェブ、1階に洋服のセレクトショップtone、そして地下1階にパンのダンディゾンが入っている。

東京に住んでいた頃、息子を連れてこのビルには本当によく通った。
ダンディゾンに入店すると、こちらに長くお勤めの女性店員さんがなんと私に気がついて、とても喜んでくださった。そして「あのかわいかった息子さんはもう22歳…になりましたか?」と聞いてくれたではないか。
そう、息子が生まれた年にこのお店ができたから、そのことをよく覚えていて下さったということだ。
すごいなぁなんだか22年も経つなんて。懐かしさのあまりいろいろとお話してしまいそうになったが、昔も今もお客さんがいっぱいの人気店だ。
当時ここで「アカネ」という名前のついたあんぱんを買って井の頭公園で食べるのがいつもの散歩コースだったので、それを息子へのお土産にあるだけ買って、挨拶をしてお店を後にした。

そのあとは友人と落ち合い、お茶をしたあと古本屋や私の大好きなヴィンテージショップ「モスリン」などを周って過ごした。
モスリンではインドのテープやフランスのリボンなど細々とした手芸材料を買った。
そしたらモスリンのオーナーがエメラルドグリーンの紙にピンクの紐を巻いたラッピングをして渡してくれた。そのあまりのさりげない可愛らしさに感激。
東京の街歩きは楽しくて何日あっても足りないな。また次に来る時をたのしみにしよう。