風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

哀れなるものたち

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祝・第96回アカデミー賞美術賞」「メイクアップ・ヘアスタイリング賞」「衣装デザイン賞」受賞。そして「主演女優賞」にエマ・ストーン

そりゃあそうでしょう!

鑑賞後も2.3日はぼーっと映像の世界に浸ってしまったほど、美術も衣装も独創的で豪華絢爛、圧倒的な美しさ。これほどパワーのある映画はそうそう現れないと思う。

ヨルゴス・ランティモス監督作品「哀れなるものたち」。

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お話は《エログロ悪趣味ロードムービー》と言ったら言い過ぎか?ピーター・グリーナウェイジャン=ピエール・ジュネが好きな自分としては「哀れなるものたち」の世界は嫌いじゃなかった。

 

脳は胎児。身体は若く美しい女性、ベラ。

天才外科医の移植手術によって生まれ変わったベラが、自分探しに世界へ旅立つ、破天荒なロードムービーだ。

大人の肉体でありながら、新生児の目線で物事を見つめるベラは、毎日貪欲に多くのことを学んでいく。奔放すぎるがゆえに普通に考えるととんでもない性被害にも遭うのだが、ものともせず自分の思うがままに行動することで平等や自由を知り、時代の偏見から解放され成長していくのだ。その様が痛快だった。

だからフェミニズム映画かと思いきや、そうではないのだ。「誰にも支配されず自己を確立し、力強く生きることへの人間讃美」に加えて「各自の倫理観が問われる映画」なのではないかと自分は捉えた。


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着せ替え人形のように次々と見せてくれるベラ・ファッションは、名付けるならネオ・ビクトリアン。クラシックな雰囲気を感じさせつつ攻めたデザインで。

顔の4倍はあろうかと思うほどの巨大なパフスリーブがついたドレスやジャケット。

レモンイエローのショートパンツ。生クリームのような真っ白いマント。知性を身につけるようになってからの洗練された、モードなブラックファッション。

どれもこれも写真集が欲しいくらい素敵だったのだけど、とくにウエディングドレスのデザインが一番好きだった。

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《哀れなるものたちのためのコーディネート》

この映画を観る日はラッフルレースとパフスリーブでと決めていた。

しかし、映画を観た後に思った。こんなボリュームじゃまだまだ!ってことを。