風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

緑のオウム

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国の重要文化財である札幌豊平館。明治時代に天皇家のお宿として造られたあと、平成23年までホテルや社交場として市民に利用されてきたアメリカ様式の建築物だ。

先日この素敵な会館で演劇ユニット《ともす》による朗読劇「緑のオウム」が開催された。

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会場の広間の頭上には、美しい彫刻が施された大きなシャンデリア。

そして足元の赤い絨毯にはかわいらしいピンクの薔薇の花が織り込まれていて。

こんな素敵な場所でこれから観劇ができるなんてと気分が上がった。

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場内のライトが消えると目の前に白いドレスをまとった美しいふたりの女性が登場した。朗読家の兎ゆうさんと、アナウンサーの森さやかさん。一番前の真ん中という良席だったので息継ぎまでが聴こえてくるような近さだった。

朗読劇といっても《ともす》の演劇はただ本を〝朗読〟するだけではないところがユニークだった。福井岳郎さんによる南米民族音楽の〝生演奏〟と、絵本作家の橘春香さんの手によるプロジェクターに投影された〝美術〟が加わるのだ。

 

今回の演目「緑のオウム」は北海道在住の絵本・児童文学作家の高楼方子(たかどのほうこ)さんが書いた短編物語だ。

 

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南米のとある旧市街のアパートで家族と幸せに暮らす快活な少女メイヴィス。そして白い館に住み肩に緑のオウムを乗せた美しい少女リネット。

外見も住む場所も全く違う2人はふたりはある日、手と手を合わせた瞬間に身体がそっくり入れ替わってしまう。最初のうちは自分ではない他の女の子になれたことが嬉しくて仕方がない(とくに憧れのリネットに変身できたメイヴィスの方が)。

しかしやがて彼女たちは、そのまま元の自分に戻ることができなくなってしまう…

思わぬ展開にぞくっとし、室温が少し下がったような気がした。SF小説のような悪夢のような、そんなミステリアスなお話だった。

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舞台美術を担当した橘春香さんは絵本作家・イラストレーターとして活躍されている方だが、今回描かれたこのポスターが本当に素敵だった。この物語そのままの世界を表現し切っていて素晴らしいと思った。

また福井岳郎さんによるギターやフォルクローレなどの南米楽器の演奏もとても良かった。暑い異国のじめじめとした湿度の高さや植物の匂いなどを舞台に運んでくれた。


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終演後、外に出るとあたりはすっかり暗くなっていて、柳の葉が生い茂る目の前の大きな池では、百匹は超えるであろうカエルたちが大合唱を奏でていた。舞台の余韻も手伝ってその光景が不気味に感じられた。

ふと豊平館の2階の窓を見やると、肩に緑のオウムを乗せたリネットがいたりして…そんな訳ないのだけれど。

 

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《おまけ》

この日の装いは「オウム」の羽根をイメージした羽付きピアス。そして豊平館のテーマカラーであるウルトラマリンブルーに合わせて、水色のリネンのワンピースを着ました。

とても暑く本格的な夏の入り口のような日だったので、見た目にも涼し気な雰囲気を意識しました。