新年最初に観る映画はデジタルリマスター版でスクリーンに蘇った「アメリ」と決めていた。
初公開されたのは22年も前のこと。
渋谷のシネマライズに並んで、満席のシートで見たことを思い出す。
毒があってファンタジックな世界全開のジャン=ピエール・ジュネ監督の作品はもともと好きだった。「デリカテッセン」「ロストチルドレン」はとくに今でも好きな映画として挙げられる。
しかし、その二作の後に撮られた女の子が主役の「アメリ」については、ほぼ内容の方は全くと言っていいほど覚えていなかったので、今回新鮮な気持ちで向き合えた。
そうだ、アメリってちょっと風変わりでおせっかいな優しい女の子だったな。
他人のお世話ばかり焼いて自分のこととなると不器用なアメリ。彼女の恋が最後に成就するシーンでは「良かった!良かったね!」とつい母親目線で見てしまい、幸せな気持ちに包まれた。
あの頃「アメリ」は雑誌でたくさん特集されていたし、アパレルやカフェとのコラボもあってなんとなく「おしゃれ映画」として語られていたけれど、意外にもしっかりと中身がある映画だったんだな。
魔法のフィルターがかかったようなとろみのある映像や、ザ・オールドパリといった切ないヤン・ティルセンの音楽は、時を経ても普遍的な良さがあった。
映画を観たあと、なんとなくまっすぐ家に帰るのはもったいなくて、隣のBARに寄って映画の余韻に浸ることにした。
去年の「絵本とわたし展」で一緒に参加した童話作家のたちばなはるかさんが、今回パンフレットの中でパリマップのイラストを手掛けられている。ちょっと猫背なアメリや手描きの文字がかわいいの。
アメリのようにモンマルトルのサクレクール寺院の階段を駆け上がりたいなぁ。そしててっぺんからパリの街並みを眺めたい。
マップを眺めながらコーヒーを飲み豆をポリポリ口に運ぶ。
パリと映画のことだけを考える正月、夜の10時過ぎ。至福の時間だった。