2月28日で閉店してしまったLamp Harajuku。
ここは私にとって原宿のランドマーク的存在のセレクトショップだった。駅を降り、ここに向かう道中はいつもわくわくした。
帰りはcafè de F.O.B(閉店)でフレンチトーストか、シーモアグラス(元気に営業中)でカレーを食べるのがお決まりのコースだった。
チェコスロバキア時代の映画「ひなぎく」をイメージした一軒家サロンのようなLamp。
甘くかわいらしい中にも毒があって、デザイナーと職人の心意気が伝わってくる洋服だけを国内外問わずセレクトし、扱っているお店だった。
そしてもうひとつ。
経営はミナペルホネンとは別だが皆川明さんがデザインに関わっていて、アートディレクターを菊池敦己さんが担っていたファッションブランド、サリー・スコット。
服こそは買わなかったけれど、シーズンごとに発表されるポスターやカタログ「ニクキュー」が好きで、必ずチェックしていた。
2002年に始まったサリー・スコットも2月でその活動に幕を閉じた。
ここ数年、アパレル企業が倒産したり店舗を縮小するニュースをよく目にするが、その度、悲しい気持ちになる。
装って出かける機会がぐんと減り、洋服を買ってる場合じゃない生活状況の人も多いのだから理解もできる。
ファッションが好きでたまらない私でさえ、この冬に袖を通す機会がなかった愛用のワンピースがズラッと並ぶクローゼットが目に入るとき、「これ以上、新しい洋服を買っていいものか」と少しだけ思うときがある。
そんなモヤモヤを抱えている時に読んだ「モード後の世界」著・栗野宏文 出版・扶桑社
とても面白かった。
ユナイテッド・アローズ創業者のひとりで現在は上級顧問、そしてクリエイティブディレクターを務めている栗野さん。
この本は社会潮流とファッションの関連性を分かりやすく解説した社会学の本と言ってもいいような骨太な内容だった。
ファッションの世界を志す若者や販売員さん必読の書ではないか?
覚えておきたい言葉だらけで付箋がいっぱい。
パンデミック後、ファッションはどんな方向に向かうべきなのかについても言及していて、その言葉に新しい世界が待っているように思えて勇気づけられた。
もうそろそろ、トレンドに合わせて洋服が大量に生産され、余剰分が廃棄される時代は終わるだろう。
洋服作りに従事する人間の誰もが傷つかず、無理をせず、シーズンごとに質の良いコレクションを発表し、それを適正な価格と量で売る。客は自分の個性をひきたてる一着を(二着でもそれ以上でもいいけど!)販売員と一緒に吟味して選び、それをずっと大事にする。究極の理想かもしれないけど、そんな好循環がファッション業界に戻ってくるといい。
ファッションとは人間の尊厳を表すものだと栗野さんは言う。今は、誰もが人として異なっていていいんだという価値観の時代だ。
パンデミックが終わった新しい時代には、個々がファッションをより自由に新しいスタイルで選択できるのかもしれないと思うと、楽しみでならない。