イギリスの覆面アーティスト、バンクシーの展覧会「天才か反逆者か」を観にいってきた。
ステンシルを使ったバンクシーのストリートアートが世界の街角に突如現れてニュースになるのを見聞きしたことはあるが、作品をこうしてひとまとめに観られる機会はなかなか無かった。しかも札幌で。世界のリッチなコレクターさんたちに感謝!
私が想像した以上にバンクシーの作品は反戦、反権威主義、消費社会への警告など、反骨精神に溢れていた。
昔の新聞にはよく世界情勢や政治家を揶揄する風刺漫画が載っていたものだけど、それを思い出した。バンクシーはそれを新聞ではなく、突如現れた世界のどこかの壁や橋など路上に作品を残して消える。
なるほどステンシルの型があればスプレーするだけで作業が手軽で、時間が取られない。その手際の良さ、ストリートに残る作品はとびきりお洒落でダークユーモアに溢れていて。ときには心まで盗んでいくルパンのようでカッコいい。
スマホにアプリを入れると会場で音声ガイドが聴けるのだが、イヤホンを忘れたのでそれができず残念だった。
しかし絵に込められた思いはストレートで、レターメッセージも読めばわかる簡単なものなのだったので「ガイドから知らされることより自分で感じること」を大事に鑑賞した。
とくに戦争を皮肉る作品はよく見るとゾッとするものが多く、強烈だった。
バンクシー作品はウォールアートだけではなく他にもいろいろあることを初めて知った。
展覧会では2015年に5週間だけバンクシーら60組のアーティストにより開催された「Dismaland」の映像インスタレーションを見る事ができた。ディズマランドはイギリスのウェストン・スーパーメアーのリゾート地の跡地に作られた、悪夢のようなアート作品を楽しむテーマパークだ。
たとえば…ひっくり返った馬車から飛び出たシンデレラとそれに群がるパパラッチの様子は、イギリスのダイアナ妃が自動車事故で亡くなった時の様子を皮肉っている。
他にもぼろぼろのシンデレラ城の前に切り刻まれて歪んだアリエルがいたり、難民すし詰め状態のボートを操縦するアトラクションがあったり。他にも、世界最悪な接客サービスが受けられるなど、悪趣味ぎりぎりのセンスがてんこ盛りだったそうな。史上最低のテーマパークDismalandに、当時知っていたなら行ってみたかった。
《The walled off hotel》は、バンクシーのアイデアが詰まったアート作品ともいえる、パレスチナのベツレヘムに現存するホテルだ。
イスラエルとの分離壁の真っ正面に建つこのホテル、スイートルームの窓を開けると見えるのは汚い分離壁だそう。世界一眺めの悪いホテルという別名で呼ばれているこのホテルにいつか泊まってみたいと思った。
そしてやっぱり私は手芸作品に目がいくのだった。
クッションに刺繍された文字や
おばあたちの編むセーターに書かれた文字に心を掴まれた。
PUNKS NOT DEAD
THUG FOR LIFE
私が大金持ちだったなら、この作品を競り落として、離れのアトリエ(ここまでセットで妄想)に飾るだろう。
一緒に行ったNさんに撮ってもらった。
《Girl with Baloon》の看板とともに。