京都はモーニングの用意がある珈琲の名店が多いから、朝ごはんには困らない。
今回はホテル近くの「高木珈琲店」で賑やかにモーニングを食べた。コーヒーから立ち昇る湯気、ほわほわのスクランブルエッグ。向かいには、孫の顔を見ながら元気にお皿を平らげる母がいて。
お腹が満たされ活力が湧いてくる中、雀のさえずりを聞きながら向かったのは、四条河原町の「ミナペルホネン京都店」。
壽ビルディングというレトロビルのほとんどのフロアを大人服、子供服、インテリア雑貨など趣が異なるミナの各ショップが占拠していて、いまやここは京都の観光名所のひとつとなっている。しかしミナ独特の店内の軽やかでどこか凛とした空気感は変わらず、商品の周りに置かれた洋書や季節のお花などにスタッフの方たちの心配りを感じ、私の心を潤わせてくれた。
聖地巡礼のあとは祇園まで歩いて「鍵善良房」で、各自名物くずきり、練り切り、お抹茶などをいただいた。ショーケースに並ぶ秋の和菓子の愛らしさに目を細めつつ、留守番の家族にお土産を購入した。
母が長年贔屓にしているお香屋「尾張屋」にて、だいぶ年を召されたがご健在で何よりのご主人と再会。
きれいな京都弁を話すご主人につられて怪しいイントネーションになる母の様子も毎度同じだ。
クロネコヤマトの集配所なのだろうか。
祇園のお店は看板も小粋でシンプルだ。
白川沿いをそぞろ歩きしていたら、屋根の上にサギを発見。突然現れたサギに私たちはもちろん、海外からの観光客も一斉にカメラを向けた。
ジブリアニメ「君たちはどう生きるか」のアオサギの声で(もちろん菅田将暉の)何か意地悪なことを喋り出すのではないかと思った。
大徳寺は20以上の塔頭寺院で構成された巨大寺院だが、その中から今回訪れたのは「瑞峯院」だ。
不思議な形に整えられた松の木に迎えられ、澄んだ空気に満ちた寺の中に入ると、仏間の奥から突然、緋色の法衣を着たダライ・ラマ似の住職が大声で叫びながら飛び出してきた。
「いやぁぁ〜ひゃぁぁ〜!えらいこっちゃ!」
私の顔を見て大興奮だ。
「???こ、こんにちは!」と戸惑いながらとりあえず挨拶すると、ハイテンション住職は私の後ろにいた母の肩をバンバン叩いてめちゃくちゃ楽しげに
「いやぁぁ〜こわいわぁ!」と笑いながら台風の目のように去っていった。
やたら嬉しそうな様子に悪い気はしなかったが、あれは一体なんだったのだろう。近くにいた外国人女性もびっくりしながら半笑いしていた。
後日友人にこのお寺での珍エピソードを話したら「もしかしてお父さんも一緒に来ていたのでは?」と言うではないか。
住職には、女4人楽しげに旅しているところにあの世から父がついて来ていたのが見えていたということか。だとしたら面白いのだけど、真相は住職にしか分からない。
ところでここ瑞鳳院に来た目的は、「閑眠庭」と呼ばれる石庭を見ることだった。
フランシスコ・ザビエルから洗礼を受け、キリシタン大名として知られた大友宗麟公が室町時代に創建したのこのお寺。
「閑眠庭」には石が縦に4つ、横に3つ、十字架の形になるように配置されている。侘び寂びを感じる普通の石庭とどこか違うスタイリッシュさが感じられて、よいお庭だった。作庭師は私の好きな重森三玲氏。
大徳寺ゾーンからほど近いところに玉の輿のご利益があるとされている「今宮神社」がある。
姪に「拝んでく?」と訊ねたら「うーん。自分で稼ぐから行かなくていいわ!」と頼もしい答えが返ってきた。
今宮神社の参道で1000年ものあいだ商いを続けている「一文字屋和輔」。時代劇のセットのような店舗の軒先でお茶とあぶり餅をいただいた。
たっぷりの甘い白味噌にくぐらせたあぶり餅の美味しいこと。1人前11本だが、お餅はとても小さいのであと30本くらいは食べたかったなぁ。
お持ち帰り用の包みの、用の美にハッとさせられた。
〝紙包み好き〟にとっては堪らない、素晴らしい形だ。
予約していたディナーのお店に行くまで少し時間があったので、佛光寺境内にある「D &DEPARTMENT KYOTO」に行ってみた。
〝長く続くよいデザインを使おう〟をコンセプトにしたD&D。中目黒店や札幌店も大好きだけれど、関西ならではの品揃えで活気に溢れる京都店は、スタッフのみなさんが最高におもてなし上手だった。あらゆる品物に対して興味津々で細かい質問をする私に、確かな知識に基づいたコメントを添えて愛情いっぱいにお薦めをしてくれたのだ。
よいものを納得して買い、長く使うことは、自分の暮らしを豊かにし尊重することにつながると思う。
妹一家が大阪に住んでいた頃、まだ小さかった姪や、私の息子も連れて4人で一緒に何度か足を運んだ器と道具の店「木と根」にも寄った。
変わらない質実剛健な店内の様子に懐かしさで胸いっぱいになった。
〜本日のお買いもの〜
⚪︎壽ビルディング内にある絵本屋「メリーゴーランド」でゴフスタインの絵本。
⚪︎「D&DEPARTMENT KYOTO」で和ろうそくと燭台。
⚪︎「木と根」でmiepumpのコーヒー豆と御菓子丸の琥珀糖・鉱物の実。
ディナーは五条駅そば、住宅街にひっそりと佇むイタリア料理店「ハシヤとナカセ」で。
祇園の名店イルギオットーネで修行をしたシェフとソムリエのイケメンおふたりで営むお店で、予約がなかなか取れないのに席を確保できた。期待大で扉を開けるシスターM。
突き出しからしてこのボリュームと内容。歓声を上げる女子4人。驚きの宴が幕を開けた。
昨日の中華に続き、どの品もほんとうに素晴らしかった!気取らないメニューが揃うが、ガツンと一捻り効いている男らしいイタリアン。ちゃんと野菜もたっぷり使っていて、和の要素もあるからなんだか優しいのだ。
とくに唸った一品はこちらの「ラム肉のキーマペンネ」だった。
お料理が抜群においしいと進むのがお酒だ。
生ビール(関西では珍しくサッポロなのが嬉しかった)、そして母に付き合って日本酒。シスターMとスロバキアのナチュラルワイン。このワインはオレンジ色の泡が立ち、洋梨、パイナップル、ハチミツ、そしてなぜかヤクルトのような味わいもあって、個性的でとても美味しかった。
4人で11品ほどのアラカルト料理を楽しみ、お腹いっぱいになったと思いきや、ここから高島屋の地下まで歩き、それぞれが好きなケーキを選んだ。
そしてホテルの部屋でティーパーティーと称した二次会を開いたのであった。
🇮🇹《ハシヤとナカセ》🍴🍷
地下鉄「四条駅」から徒歩6分
阪急「烏丸駅」から徒歩9分
Tel.090-7452-7487
16:00~22:00(LO/21:00)
日曜休、他不定休有
全席禁煙 完全個室無 駐車場無