今年最後に観た映画がこれで良かった。
ヴィム・ヴェンダース監督の「PERFECT DAYS」。
この映画の主人公、平山さん(役所広司)の仕事は公共トイレの掃除をすること。
規則正しい生活をし、無駄のない動きと真摯な姿勢でトイレをぴかぴかに磨く平山さんを見ていると、なぜか懐かしの「元気が出るテレビ」に出演していたエンペラー吉田さんの名言「偉くなくとも正しく生きる」が浮かんできた。
まさにこの言葉を体現する平山さんの生き方。
休憩中はサンドウィッチを頬張りながら木々を見上げて満ち足りた表情をして過ごす。清々しい仕事っぷりに加え、リラックスしている時の姿はチャーミングで魅力的だった。
《分かり合えるよい関係の姪っ子とのふれあいにも叔父のことを思い出して胸が熱くなった。》
植物、フィルムカメラ、木漏れ日。
カセットテープで聴く音楽。
仕事のあとの熱い銭湯と居酒屋で飲む一杯の酒。古本屋で一冊ずつ買っては寝る前にちびちび読む本。
好きな物や事に囲まれた平山さんの日常はささやかだけど上等だ。
そして他人に向ける視線が優しいのは
人生の光と影を知っていて、すべてを浄化してきたからなのだろう。
人間味溢れる平山さんを演じた役所広司さん。
どれだけ褒めちぎっても足りないくらい素敵な演技だった。
《本好きの平山さん。口数は少ないが豊かな人間性と広がる宇宙を感じさせてくれる。好きなタイプだ…》
消えて欲しくない東京の下町の風景、人情。ヴェンダースが撮るそんな景色や詩的な台詞も切なくて美しかった。やっぱりヴェンダース好きだな。
ラストシーンで流れるLou Reedの
「PERFECT DAY」他
カセットテープから流れてくるlo-fiな洋楽はどれも沁みるいい曲ばかり。
さっそく自分で曲を集めて勝手にサウンドトラック化しちゃった。
そして「わっあがた森魚さん!」「え?あの店主は柴田元幸さんだったの?」などところどころに個性豊かな
「あの人この人」がサプライズ的に登場するのにも驚かされたし
私にとって嬉しい贈りものだった。
映画館のソファに沈み込むと本当にほっとする。
振り返ると今年もたくさん映画が観られて幸せだった。
来年一本目に観る映画は、もう決めてある!