風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

カラオケ行こ!

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「カラオケ行こ!」が笑って泣けてすごくいい映画だった。

2月は私にとって神様みたいな海外監督の作品の公開が目白押しだから、忙しくてもう行けないけど、可能ならもう一度観たいくらい好きな作品だった。

 

この映画、合唱部部長の中学3年生の聡実くんと、カラオケ大会のために歌が上手くなりたいヤクザの狂児との交流を描くという、ありえないファンタジー設定なのだけど、嘘っぽく見えなかったのがすごい。

あれは大阪のどこか小さな町で本当にあった出来事だったのではないかと。

青春映画を撮らせたら絶対の山下敦弘さんが監督なのと、シンプルながら研ぎ澄まされた美しい台詞が並ぶ野木亜紀子さんの脚本だからなのだろう。

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校門前に綾野剛が迎えに来てたら、カッコ良すぎてビビる。ヤクザだし。

この映画を初めて知ったときに「え?またヤクザ役?」と思ったが、今回はちょっとナンパで優しくユーモアのあるヤクザ。関西弁なのも手伝って

親しみのあるお兄ちゃんぽいヤクザ役がなんともはまっていた。聡実くんとのBLとも思えるラブラブ関係も、とにかくかわいかった。

それにこの作品はカラオケや合唱部をモチーフにしているので、「歌うこと」の素晴らしさが映画からたくさん伝わってきた。

ヤクザだろうが中学生だろうが、思い切り歌っている姿は平和で、みんな素敵。


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万年最下位脱出を企むヤクザ・“ハイエナの兄貴”を演じた橋本じゅんさん。抜群の安定感で必ず笑わせてくれるから大好きだ。新しいドラマのキャストにこの人がいると知ったら嬉しくなる名俳優のひとり。
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原作の漫画にはない設定だったらしいが、聡実くんがときどき息抜きに来る映画研究会の映写室。

ここで「自転車泥棒」や「カサブランカ」などの往年の名作を中学生ふたりがビデオテープで鑑賞してるのが、とてもいいのよね。こういうゆとりが、今の子たちにあるだろうか。

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思春期、ましてや反抗期を迎える難しい年頃の男子。

母親ならその扱いに手を焼き、悩み、頭の中が心配や怒りに支配されて、円形脱毛症になる人だっているだろう。(それ過去の私)

それなのに聡実くんの両親はなんだかあっけらかんとしたゆるい雰囲気で子どもをちゃんと愛してるのが分かるし、合唱部の副顧問・ももちゃん先生(芳根京子)もいつも笑顔で大らか&天然なので、子どもたちにも慕われている。

そして学校の先生でもない立場のヤクザの狂児が、全く別の角度からものごとを教えてくれたり優しく諭してくれるのだから、聡実くんにとっては恵まれた環境だったのだと思う。大袈裟にいうと地域ぐるみで子どもを育ててるというか。そんなのいいなぁと思う。

狂児との出会いふれあいを経てから、最後にある衝撃的な出来事が起こる。そこから聡実くんの心が一気に解放されていく物語の〆が最高だった。

卒業式を迎えてひとまわり大きく成長した聡実くんの姿は凛々しくて、お母さんは胸がいっぱいになったよ。


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綾野剛が裏声で歌う「紅」は気持ち悪くて面白かったが、地声で歌う「ルビーの指環」や「歩いてかえろう」がめちゃくちゃセクシーだった。音源化されればいいのに。