風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

さよなら冷蔵庫

結婚した年からずっとわが家の大事な食料を冷やし続けてきたSHARPの冷蔵庫。

お正月明けに突然冷やす力が弱まり、アイスクリームを筆頭に冷凍食品が溶け出してきた。

無理もないな、勤続24年目だもの。とうとうお役御免の時を迎えそうということで、夫とヨドバシカメラに行って新しい冷蔵庫を予約した。頼んだ冷蔵庫のメーカーの品物はどれも納期が遅く、届くまで2週間以上かかるということだった。

さて食料の保存、どうしよ。そうだ、今はマイナスの雪の世界だ。庭の雪山にクーラーボックスを入れて天然冷蔵庫として使うことにした。

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そんなわけで、かなり面倒くさいが食事のたびにお肉や冷凍の食材をそこから取り出して調理するという、ちょっとしたサバイバル生活がスタート。

それもなんだか少し楽しいかもと思えてきた頃、突然古い冷蔵庫がまたギュイーンと音をさせながら動き出した。「まだボク、使えるよ!」と言わんばかりに。ぐんぐん庫内の温度を下げていく冷蔵庫。老体に鞭打って。切ない。家電にも心があるように思えてならなかった。

でも臨終が近いことには変わらなかった。

庫内がマックスまで冷えると、こんどはまたどんどんぬるくなっていったから。

そんなことを繰り返しているうちに新しい冷蔵庫が届く日が近づいてきた。

いよいよ今日でさよならという日の朝。

できる範囲ではあったがきれいに磨きあげ、最後は私の手でコンセントを抜いてあげた。

ウンウン音を鳴らしながら頑張って働いていたコンプレッサーの音が消えた。心臓が止まったかのようだった。

なんだか安楽死させたみたいだなと思って「ありがとうね」と言いながらボディをさすってあげた。

新しい冷蔵庫を届けにきてくれた配送のおじさんにこの事を話すと

「24年はすごいわ。聞いた事ないよ。よく働いたね。任せて!最後までちゃんと運んでやるからね。」と言ってくれた。

運びこまれた新しい冷蔵庫はどこもかしこも真っ白で、ドアがフレンチタイプと呼ばれる観音開きのかっこいい子。もちろんすごく嬉しかった。

けれど雪の中トラックに積み込まれていくボロボロのシルバーの冷蔵庫の方が、なんだかずっと愛おしくて悲しかった。

家電ひとつにこんなに感情移入してしまうとは。バカみたいな話だけど。