風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

母とジンジャーエール

 

 

 

 

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先日、母の1回目のワクチン接種に付き添った。

集団接種の会場に指定されていた場所は、20年前に私が結婚式を挙げた懐かしい「札幌パークホテル」だった。

ロビーは、早く来過ぎた高齢者たちで溢れかえっていて大賑わい。焦って転倒するおばあちゃんがいたり、ソーシャルディスタンス無視で列を詰めようとして密を作り出すなど、カオスな状態になっていた。やれやれ。

「ここからはひとりで大丈夫だから」という母のことばに私はその列を離れ、ティーサロンで待つことにした。

入り口のショーケースでチョコレートケーキを選んだあと、黒服のボーイさんが中庭が見える窓際の席に案内してくれた。

ホテルでお茶するのは久しぶりだったのでなんだかウキウキした。undercover×GUの新しいレースのスカートでお洒落してきて良かった。

中庭を見やると、美しく整えられた庭の植物たちは夏に向かってぐんぐん生長しているようすで、生命力に溢れキラキラしていた。

持参した本もたいして読まずに、庭を眺めているだけで退屈することがなかった。

コロナがなければ。もうそろそろこのホテルの裏にある中島公園で、恒例の夏祭りが始まる頃だ。

普段は静かな公園にはたくさんのテキ屋が並び、そぞろ歩く人たちによって狭い砂利道に砂煙が立つのだ。

そして露店の向こうにはレトロな見世物小屋やバイクショーのテントがひと夜の夢のように出現していただろうに。

 

だいたい、このパークホテルも2023年には壊され、中島公園周辺の再開発のひとつとしてヒルトンに生まれ変わるというから、なんだか寂しい話だ。

できれば公園の木々に棲むたくさんの小動物たちの暮らしを邪魔しないように進めて欲しいものだわ…

それに最近の大通公園については市長に文句を言いたいわ。勝手にオリンピックのパブリックビューイング会場にしちゃおうとして芝生丸ハゲにしてさ、何だってのよ!

 

そんなことを考えていたら、母が元気に戻ってきてウエイトレスに「ジンジャーエールください」と言った。

炭酸を頼むなんて珍しいと思ったけど、老人だらけの会場の重い空気を一掃したい気分なのだろうと推測した。

一人暮らしの母は、時々大ボケ発言をかましたり、足元の段差に躓きそうになったりするほどには、老化している。

だけど一緒にヨガをしているせいか風邪もひかないし、少食だがなんでも良く食べ、基本的には健康だ。

父の分も長生きして、まだまだ楽しい思いを味わって欲しい。