《わたしは最悪。》という変わったタイトルの映画を観てきた。英語のタイトルはTHE WORST PERSON IN THE WORLD
この邦題、賛否両論あるみたいだけど私は好き。映画を見終わったあとにこの邦題の意味が決して悪い意味ではなく、逆説的な意味を持っていると感じたから。
ユリヤ(レナーテ・レインスヴェ)という名の30歳の女性の恋愛事情に人生を絡めて描いた物語。
彼女の自由奔放な恋模様を見ていて感じたのは、
「恋に恋し、誰かに愛されている恋愛期間は、長い人生の中で一番輝いてる華の時代なんだなぁ」ってこと。ちなみに映画のフライヤーになってるこの写真。笑顔でどこかへ駆けていく彼女のこの表情は、二人目の彼との恋愛がまさに今始まった瞬間の顔である。「これから彼に会いにいくの!嬉しくて仕方ないの!」っていう、人生を謳歌しているとってもいい表情だと思う。
しかし最初は運命だと思った恋人でも一緒に生きていけるかというとそれはまた別の話で…
最初の彼とは結婚観の違い、二番目の彼とは知的レベルの差。それとちょっとした価値観のズレがだんだん大きくなり、あれだけ好きだった彼らにユリヤは別れを切り出す。戸惑う彼氏たちが哀れだったし最初の彼はのちに末期の腎臓癌にまでなって本当に気の毒だったけど、切り替えの早い彼女の姿は痛快でもあり。
大学で医学→心理学に転向→なぜか小説家の真似事→書店員→カメラマン。点々と「自分探し」をしながら、恋と同時に仕事に対しても悩みながらも本能の赴くままに突き進むユリヤ。見る人によっては「最悪」かもしれないが、都会に生きる現代女性の生き方として「最強」なのではないかなと感じた。
白夜や夕焼けが美しいオスロの街が舞台で、登場人物が皆んな美男美女だったのもあって映像はやたらスタイリッシュだったけど、リアルに共感できる部分が多い映画だった。
「わたしは最悪。」
監督: ヨアキム・トリアー
脚本: ヨアキム・トリアー、エスキル・フォクト
出演: レナーテ・レインスヴェ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー、ハーバート・ノードラム
配給: ギャガ
ノルウェー、フランス、スウェーデン、デンマーク/カラー/ビスタ/5.1chデジタル/128分