風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

Pearl パール

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タイ・ウエスト監督 A24制作映画「Pearl パール」。

このポスターと予告編をみて「これは好きだぞ!」と第六感が働き、レイトショーで観てきました。

 

1918年のテキサス。のどかな農場。

動物たちと戯れるパールの姿が映し出されるところから映画は始まるのだけど、ここはまるで「オズの魔法使い」のような夢あるオープニング。

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厳格すぎる母と車椅子の父親と一緒に暮らすパール。第1次大戦に出征中の夫の帰りを待ちながらつまらない毎日を「いつかミュージカルスターになる」という夢を見つつ、やり過ごしている。

来る日も来る日も毒母の叱責にひたすら耐えつつ働く「籠の中の鳥」状態のパール。ここまでは、ロマンチックな映像と音楽も相まってディズニー映画のヒロインのような展開に転んでもおかしくない流れだ。

「いやいや、でも何か違うね?」と不穏な空気が漂い始めるのにはそう時間かかからなかった。

パールが、飼っているガチョウを大きな鍬でいきなり串刺しにしたのだ!

「ひー!そのガチョウどうすんの?」

「わっそう来たか」

長袖を着て行ったのに、そこからはゾクゾクが止まらない。

鬱積していた負の感情はあることをきっかけに精神の崩壊を呼び起こし、彼女は発狂。恐ろしい殺人鬼になってしまう。その様子をファンタジックに、そして悲しみたっぷりに描いたロマンチックホラーだった。

行き場を失った怒りや悲しみを抱えた人間が殺人鬼へと変貌する様は、本当に切なくて怖い。

パールはレクター博士やジョーカーに並ぶ個性派シリアルキラーだと思う。

 

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ハイ、パールさん、一度スイッチ入ったら止まりません。笑っちゃうくらいキレてます。

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更にヤバくなってるパールさん。

 

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出てくる人たちの20年代ファッションがとにかくかわいくて好みでした。

 

他にも…

⚪︎赤を効かせた50's風テクニカラー

⚪︎黒い筆記体で描かれたタイトルバック

⚪︎オーケストラ音楽(ホラー映画盛りあげ隊)

⚪︎世にも恐ろしい家族の晩餐風景

⚪︎ラストのパールのバキバキに決まった笑顔

 

ぜーんぶイカれてて全部好き!でした!

 

この物語は老婆になったパールが暴れまくる前作「X エックス」と、殺人鬼パール誕生の秘密を描いた今回の「pearl パール」に続いて、3作目も撮影が進んでいるそうだ。

多くの人を殺しておいて何だけど、本当に気の毒な生い立ちなので、幸せになって欲しいと思っちゃった。それほどパールが魅力的。

 

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日本版ポスターをヒグチユウコ×大島依提亜のお二人が作っている。

これ、販売して欲しいな〜

パンフレットも買いたかったのに、売り切れだった…