風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

LAMB/ラム

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大変、終わっちゃう〜と土曜の夜、急いで見に行ったヴァルディマル・ヨハンソン監督・A24配給映画「LAMB/ラム」。札幌でも上映してくれるところがあって良かった。

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アイスランドの山間で羊飼いをしている夫婦・イングヴァルとマリア。クリスマスの夜に産気づいた羊から「顔は羊で身体が人間」という異形なものが生まれ、二人はその存在を“アダ”と名付けて育てることにする。
子供を亡くしていた二人にとって、アダとの生活はこの上ない幸せに満ちていたが、やがて夫婦は破滅への道をたどることになる。。》

とあらすじはこんな感じ。

 

盛り上げ方(見せ方)のうまい映画だった。肝心なところははっきりと見せずに焦らし、ましてやセリフで説明するのではなく、物言わぬ動物たちの表情や興奮して騒ぐ様子から、いろいろと想像させるのだから。

大自然の中の一軒家。他に人が住んでいないからか、この夫婦が暮らす家はカーテンは開けっぱなしだし、ドアも半開き。閉めなさいよ…とずっと不安だった。白夜なのも時間感覚を狂わせるし。

と思ってたら、ほれ見なさい。ある日家の外から1匹の羊が恨めしそうに家族3人を見ていたんだから!母羊から子どもをとりあげて服着せて家の中に閉じ込めてるんだから、そうなるよね。ここからジワジワ始まる羊の復讐…。

そしてそれに負けじと応戦する母性の塊、マリア。ハンパないガッツを見せる。こういう時の女は強い!


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時代設定が分からないが、カーテン開けっぱなしのこの人間たちは携帯電話すら持ってないのだ。ピンチの時や何か心配事が起きた時、必ず連絡を取り合うものだけど、それができないから、観客も一緒になって恐怖や心配な気持ちを味わう。

ここ数年日本の映画はスマホに頼りすぎだと今回思った。内容にもよるけど、とくにホラー映画は携帯、使わない方が面白いかも!

 

R15指定だけあってラストはまぁまぁな惨劇を見せられる。そして広大な牧草地にマリアだけが一人取り残されて、物語は唐突に終わる。

はっきりと結末を描かないことにムズムズする人もいるかもしれないが、神(羊)から子ども(アダ)を奪った罰が下されたのだと悟ったであろう、マリアの呆けたような表情が印象的だった。

面白かった!「圧倒的大自然の中の、風変わりなホラーおとぎ話」といった物語と、こういうダークで美しい映像は大好き。


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これは、アダをモデルにヒグチユウコさんが書き下ろしたポスター。映画を観た人にとってはアダは気持ちの悪い羊人間などではなく、かわいい人間の子どもに見えてしまっているから不思議だ。