風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

ハイテンション住職とくいだおれの夜・京都2日目

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京都はモーニングの用意がある珈琲の名店が多いから、朝ごはんには困らない。

今回はホテル近くの「高木珈琲店で賑やかにモーニングを食べた。コーヒーから立ち昇る湯気、ほわほわのスクランブルエッグ。向かいには、孫の顔を見ながら元気にお皿を平らげる母がいて。

お腹が満たされ活力が湧いてくる中、雀のさえずりを聞きながら向かったのは、四条河原町の「ミナペルホネン京都店」。

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壽ビルディングというレトロビルのほとんどのフロアを大人服、子供服、インテリア雑貨など趣が異なるミナの各ショップが占拠していて、いまやここは京都の観光名所のひとつとなっている。しかしミナ独特の店内の軽やかでどこか凛とした空気感は変わらず、商品の周りに置かれた洋書や季節のお花などにスタッフの方たちの心配りを感じ、私の心を潤わせてくれた。

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聖地巡礼のあとは祇園まで歩いて「鍵善良房」で、各自名物くずきり、練り切り、お抹茶などをいただいた。ショーケースに並ぶ秋の和菓子の愛らしさに目を細めつつ、留守番の家族にお土産を購入した。

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母が長年贔屓にしているお香屋「尾張屋」にて、だいぶ年を召されたがご健在で何よりのご主人と再会。

きれいな京都弁を話すご主人につられて怪しいイントネーションになる母の様子も毎度同じだ。f:id:usotomishin:20231119125322j:image

クロネコヤマトの集配所なのだろうか。

祇園のお店は看板も小粋でシンプルだ。

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白川沿いをそぞろ歩きしていたら、屋根の上にサギを発見。突然現れたサギに私たちはもちろん、海外からの観光客も一斉にカメラを向けた。

ジブリアニメ「君たちはどう生きるか」のアオサギの声で(もちろん菅田将暉の)何か意地悪なことを喋り出すのではないかと思った。f:id:usotomishin:20231125005854j:image

祇園からタクシーで一気に紫野の大徳寺まで移動。

大徳寺は20以上の塔頭寺院で構成された巨大寺院だが、その中から今回訪れたのは「瑞峯院」だ。

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不思議な形に整えられた松の木に迎えられ、澄んだ空気に満ちた寺の中に入ると、仏間の奥から突然、緋色の法衣を着たダライ・ラマ似の住職が大声で叫びながら飛び出してきた。

「いやぁぁ〜ひゃぁぁ〜!えらいこっちゃ!」

私の顔を見て大興奮だ。

「???こ、こんにちは!」と戸惑いながらとりあえず挨拶すると、ハイテンション住職は私の後ろにいた母の肩をバンバン叩いてめちゃくちゃ楽しげに

「いやぁぁ〜こわいわぁ!」と笑いながら台風の目のように去っていった。

やたら嬉しそうな様子に悪い気はしなかったが、あれは一体なんだったのだろう。近くにいた外国人女性もびっくりしながら半笑いしていた。

後日友人にこのお寺での珍エピソードを話したら「もしかしてお父さんも一緒に来ていたのでは?」と言うではないか。
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住職には、女4人楽しげに旅しているところにあの世から父がついて来ていたのが見えていたということか。だとしたら面白いのだけど、真相は住職にしか分からない。

ところでここ瑞鳳院に来た目的は、「閑眠庭」と呼ばれる石庭を見ることだった。

フランシスコ・ザビエルから洗礼を受け、キリシタン大名として知られた大友宗麟公が室町時代に創建したのこのお寺。

「閑眠庭」には石が縦に4つ、横に3つ、十字架の形になるように配置されている。侘び寂びを感じる普通の石庭とどこか違うスタイリッシュさが感じられて、よいお庭だった。作庭師は私の好きな重森三玲氏。

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大徳寺ゾーンからほど近いところに玉の輿のご利益があるとされている「今宮神社」がある。

姪に「拝んでく?」と訊ねたら「うーん。自分で稼ぐから行かなくていいわ!」と頼もしい答えが返ってきた。
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今宮神社の参道で1000年ものあいだ商いを続けている「一文字屋和輔」。時代劇のセットのような店舗の軒先でお茶とあぶり餅をいただいた。
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たっぷりの甘い白味噌にくぐらせたあぶり餅の美味しいこと。1人前11本だが、お餅はとても小さいのであと30本くらいは食べたかったなぁ。
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お持ち帰り用の包みの、用の美にハッとさせられた。

〝紙包み好き〟にとっては堪らない、素晴らしい形だ。
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予約していたディナーのお店に行くまで少し時間があったので、佛光寺境内にある「D &DEPARTMENT KYOTO」に行ってみた。

〝長く続くよいデザインを使おう〟をコンセプトにしたD&D。中目黒店や札幌店も大好きだけれど、関西ならではの品揃えで活気に溢れる京都店は、スタッフのみなさんが最高におもてなし上手だった。あらゆる品物に対して興味津々で細かい質問をする私に、確かな知識に基づいたコメントを添えて愛情いっぱいにお薦めをしてくれたのだ。

よいものを納得して買い、長く使うことは、自分の暮らしを豊かにし尊重することにつながると思う。

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妹一家が大阪に住んでいた頃、まだ小さかった姪や、私の息子も連れて4人で一緒に何度か足を運んだ器と道具の店「木と根」にも寄った。

変わらない質実剛健な店内の様子に懐かしさで胸いっぱいになった。
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〜本日のお買いもの〜

⚪︎壽ビルディング内にある絵本屋「メリーゴーランド」でゴフスタインの絵本。

⚪︎「D&DEPARTMENT KYOTO」で和ろうそくと燭台。

⚪︎「木と根」でmiepumpのコーヒー豆と御菓子丸の琥珀糖・鉱物の実。

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ディナーは五条駅そば、住宅街にひっそりと佇むイタリア料理店「ハシヤとナカセ」で。

祇園の名店イルギオットーネで修行をしたシェフとソムリエのイケメンおふたりで営むお店で、予約がなかなか取れないのに席を確保できた。期待大で扉を開けるシスターM。

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突き出しからしてこのボリュームと内容。歓声を上げる女子4人。驚きの宴が幕を開けた。

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昨日の中華に続き、どの品もほんとうに素晴らしかった!気取らないメニューが揃うが、ガツンと一捻り効いている男らしいイタリアン。ちゃんと野菜もたっぷり使っていて、和の要素もあるからなんだか優しいのだ。

とくに唸った一品はこちらの「ラム肉のキーマペンネ」だった。

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お料理が抜群においしいと進むのがお酒だ。

生ビール(関西では珍しくサッポロなのが嬉しかった)、そして母に付き合って日本酒。シスターMとスロバキアナチュラルワイン。このワインはオレンジ色の泡が立ち、洋梨、パイナップル、ハチミツ、そしてなぜかヤクルトのような味わいもあって、個性的でとても美味しかった。

4人で11品ほどのアラカルト料理を楽しみ、お腹いっぱいになったと思いきや、ここから高島屋の地下まで歩き、それぞれが好きなケーキを選んだ。

そしてホテルの部屋でティーパーティーと称した二次会を開いたのであった。

 

🇮🇹《ハシヤとナカセ》🍴🍷

京都府京都市下京区東洞院通松原下ル大江町547-8

地下鉄「四条駅」から徒歩6分
阪急「烏丸駅」から徒歩9分

Tel.090-7452-7487

16:00~22:00(LO/21:00)

日曜休、他不定休有

全席禁煙 完全個室無 駐車場無

https://www.instagram.com/hashiyatonakase/

花街めぐり・京都1日目

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先日、京都へ久しぶりに行ってきた。今回は札幌から一緒に母と妹、大阪から姪が合流する女三世代の旅。

母ファーストだからスローペースで、行く場所を厳選し、移動はほぼタクシーを利用するという贅沢な二泊三日だった。

到着してホテルにチェックインしたあと、早めの夕飯は予約しておいた町中華のお店へ。

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町中華といってもそこは花街・上七軒に古くからあるお店だから、佇まいに艶っぽさがあった。夜の帳が下りるとお店の軒先に赤い団子ちょうちんが灯り道案内をしてくれる、京都ならではの風情漂う上七軒。舞妓や芸妓さんが立ち寄ることからひと口サイズの中華が生まれたという、京ならではの中華料理は、にんにくを使わず繊細で胃に優しい。

ここ数年は京都に来たら必ず一食は中華を選んでしまうほど京都の中華はおいしいと思う。


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春巻。これ食べるために飛行機に乗って来たといってもいいくらい、絶品だった。 

お肉が入っているのに「これは羽衣か?」というくらいふわわと軽く、一瞬で胃に消えた。これ以上細くきれないのでは?と思うほど針のように細いタケノコも入っている。一言でいうならこれは天使の食べものだ。
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そして酢豚も同じく天使御用達メニュー。潔く、豚とパインのみ。はちみつのように光るトロトロの餡は軽やかで品がある。こんな酢豚は食べたことがない。
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他にも、かしわの天ぷら、麻婆豆腐、えびの天ぷらマヨネーズ和え、やきめし、汁そばなどを次々注文したが、どれもこれも涙が出るくらいのおいしさだった。

食べものの写真を載せ続けるとグルメブログになってしまうので止めておくが、最後に杏仁豆腐を。大好きな六花亭の杏仁のように優しくミルキーで幸せな味だった。

「糸仙」さんはもとは糸問屋を営んでいたという。「もう、糸はせん!」ということでこの屋号にしたらしい。洒落た店名だと思ったらダジャレかい。帰り際「全部すごーくおいしかったです!ずっと春巻を食べたくて札幌から来たんです!!」と圧強めにおかみさんに感動を伝えると、私に負けないくらいの気迫と大きな声で「いやぁぁ〜そうなのぉ〜〜嬉っしわぁぁぁ〜またおこしやす〜〜」と弾ける笑顔で応えてくれた。再訪を心に誓う。
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まだまだ夜は始まったばかり。「糸仙」を出たところで風ちゃんに「祇園のバーに飲みに行く?」と誘うと「行きたい!」と即答。母には「疲れた?ホテルで休んでる?」と訊ねると、なぜかキリッとした顔で「私も飲みに行くわ」と意外な嬉しい返答が。さすが、一杯目から日本酒を冷やでいく女だ。

上七軒からタクシーで祇園へ。


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100年の歴史あるバー「サンボア」の扉を開けた。敷居は高くはないが、独特の重厚さがあるバーだ。ここではカクテルを飲みたかったので、大好きなグラスホッパーをオーダー。爽やかなミントリキュールと生クリームの相性が抜群で、ほのかにカカオの香りもする。ミントチョコ好きにはたまらないグラスホッパー。ビアジョッキで飲みたいくらいだ。
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カクテルを2杯飲んでバーを出ると、ちょうどすぐ近くの料亭のお座敷が引いたようで、色とりどりの着物をまとった華やかな舞妓さんたちがぞろぞろと出てきたところに遭遇した。祇園で初のバー体験、そして舞妓はん行脚。夢のような時間に風ちゃんも母もとても楽しそうだった。

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鴨川のほとりでヴァイオリンを弾いていたミュージシャンが、私の好きなパッヘルバルの「カノン」を演奏し出したので思わず足を止めて聴いた。

それからまだ酔客で賑わう河原町をみんなでお喋りしながら、のんびり五条のホテルまで歩いて帰った。

ピンクの心

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10月は毎年心が軽やかで、楽しい出来事が向こうからやってきてくれる気がする。自分の誕生月だからだろう。

先日、またひとつ年を重ねた。今年の誕生日ケーキに買ってもらったのはマロンケーキ。

一応息子にも「何の味のケーキが食べたい?」と聞いたら「栗!」という答えが返ってきたので、私も大好きなマロンケーキにしたのだ。ん??なぜ誕生日でもない人にケーキの希望を聞いちゃったのかな。母親としての癖が抜けない。


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ディナーのお店は中華料理の「GURIS」をリクエストした。古いビルの上階にあり、静かで照明も暗めで、壁はグレー。パリのアンティークショップのようなとても落ち着く内装。誕生日だと言って予約してくれたからか、バーカウンターがある個室に通してもらった。季節の野菜をていねいに下ごしらえし、和食のようなほんのり薄味で整えた品々は、どれもとても滋味深くおいしかった。

それなのに「野菜ばっかりで肉はどこにあるんだ?」と不満げな息子。全然お腹が満たされなかったらしく、帰り道にローソンで「鶏南蛮弁当」を買わされる羽目に。

「GURIS」は、こんどは女子会で行こうっと。

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次の日は、人形と影絵の音楽の演劇ユニット《しろまるさん》の公演を観に、レストランPippinへ。
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絵描きの「ミコ」の人形を操る「まる」さん。《しろまるさん》はご夫婦でやられている劇団だが、「しろ」さんが脚本と音楽、木工、電気関係の舞台装置を作り、「まる」さんが衣装全般を制作、演出はおふたりでやられているそう。

純白やアイボリーの素材違いの白が重なる中、人形たちのブルーグリーンや赤が効いた、色彩の美しい舞台だった。お芝居からは、誰かと誰かが出会うべくして出会う奇跡やその時の喜びが伝わってきて、温かな気持ちになった。

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長いこと私のブログを読んでくれていた方が、最近はじめて連絡をくださって、手紙やメールで交流が始まった。なんだかすごく嬉しかった。文章を綴って世の中に公表するようになってもう12年以上の年月が経つ。昔から読んでくださっている人には、たとえお会いしたことがなくても、もう友だちのような同志のような気持ちを抱いている。そんな方はもちろんだが、最近ここにたどり着いた方も、みなさまこれからもどうぞよろしく。

Smile

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闘病中だった父方のおじが亡くなり、告別式に参列するために函館に行ってきた。

母、妹、そして私。それぞれのスケジュールや諸般の事情を考えると泊まらずにいこうということになった。往復10時間かかる函館までの、叔父を送る短くもハードな日帰り旅へ。


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父の兄弟は4人とも全員スラッと背が高く、声も大きかった。はるか昔。いとこたちも大集合する祖父母宅のお盆の集いに行くと、それは賑やかだった。父とおじ4兄弟は職も個性もバラバラな男たちだったけれど、ガハハと大きな口を開けて豪快に笑うところは、全員同じだった。親戚みんなで食べるのは毎年決まってすき焼き。タバコを吸い、ビールを飲んで酔っ払って、更に大きな声になる4兄弟。遠い夏の日の光景がなつかしい。

 

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そして、遺影になってしまった叔父さん。思い出されるのは、白いランニング姿と、真っ白な歯。


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その人を偲ぶ時、まず先に笑顔が思い出されるってことは、その人の人生はきっと幸せだったってことだ。

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告別式のあとは、函館で一番好きな聖ヨハネ教会に少しだけ寄れたし、五島軒でエビフライとクリームコロッケも食べることができた。

函館を出ようとする時、空に見事なダブルレインボーがかかった。田舎ゆえ遮るものがなかったので、虹の始まりと終わりが見れた。叔父さんが見送ってくれたのだと思う。











オオカミの家

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2018年、チリの監督レオン&コシーニャが作ったストップモーション・アニメ映画「オオカミの家」。

このポスターから放たれる、ただならぬオーラに「これ絶対好きなやつ」と直感して夜のシアターキノに出かけたら、狭いロビーは溢れんばかりの若者たちが。(男の子の比率高し)

ミニシアターが混雑してるこのニッチな雰囲気を久しぶりに味わった。

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「オオカミの家」は強烈なインパクトを残す映画だった。一体私はなにを見せられていたのだろう。夢だったのか?いや、悪夢だ。子どもの頃、高熱を出したときに見るような悪夢。それを芸術にまで高めたような、傑作だった。


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ストーリーがあるようなないような、不思議なお話なのだけど、これは1970年代チリのピノチェト政権下に実在したカルト教団のコミューン「コロニア・ディグニダ」での出来事をベースにしている。このコロニアでは、元ナチ党員で教団指導者のパウルシェーファーが軍事政権と共謀して、ドイツ人たちに暴虐の限りを尽くしたという。強制労働、身体的暴力、幼い少年たちへの性的虐待、薬物や電気ショックによる洗脳。
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教団の人々がシェーファーや当時の政府から受けた恥辱、服従、精神の崩壊、あらゆる強迫観念をアニメーションにして描いたのが「オオカミの家」なのだと知った時、戦慄が走ったし、映画館で見て恐ろしさが倍増した。それどころかあまりの閉塞感に苦しくなり「ここから出してくれ」という気になった。
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映像そのものが斬新なアート作品だった。泥人形のような大きな立体造形物が絵と混ざり合って絵の中にとりこまれ、変容していくところとか、奇妙な音楽や時折聞こえる囁き声とか、全部が混ざり合って美しいものだから、怖いのに目が離せないという衝撃的な映像体験をした。

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マインドコントロールされるってこういう感覚なのかもしれない。

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パンフレットの付録に、同時上映された「骨」という作品のポスターがついていた。このポスター、表裏ともにナイスデザイン。部屋に貼るには気味が悪いけど。
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「骨」は100年前に作られたアニメに補修を加えて現代に甦らせたという設定の短編映画で、こちらも冒頭で「これは人間の死体を使って作られた世界初のアニメーション映画だ」とキャプションが入るのだが、「古ぼけた作りが本当に100年前の物っぽくてすごいなぁ」なんて呑気に思ってすっかり騙された。死んだ人の魂を、骨を使って生き返らせる少女呪詛師のお話。

 

余談:

映画の後でカルト教団「コロニア・ディグニダ」のことを調べていたら、教祖シェーファーの顔写真が出てきた。ペドフィリア(少年性愛者)特有の顔つきなのか、いま日本の芸能界で話題になっているあの人に雰囲気が似ていて、ゾッとした。

 

ジェーンとシャルロット

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シャルロット・ゲンズブールが、母であるジェーン・バーキンを撮影した初の長編監督作品

「ジェーンとシャルロット」を観てきた。

私は20代の頃、セルジュ・ゲンズブールをきっかけに60年代のフレンチポップスに夢中になった。そこからフレンチカルチャー、シネマ、そして彼の伝説の恋人ジェーン・バーキンやその娘たちとの関係性にまで興味は広がった。

今でも大好きな人たち。70才を超えたジェーンを娘シャルロットが撮影し、ジェーンの歌が流れ、こんな素敵なドキュメンタリーに仕上げるなんて。悲しいエピソードも聞かされたのに、終始満たされたような気持ちでスクリーンを観る幸せな時間だった。

京都の宿で、パリの街角で。ふたりをとりまく空気が透明で、ふたりの姿が美しかった。さりげなく清潔な普段着がかっこよく決まっていて。私の理想とする永遠のパリジェンヌたち。

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この映画の中では、これまで語ることのなかった娘たちへの想いや、彼女だけの苦悩や後悔が明かされていた。とくに近年、長女・ケイト・バリーの自死以来、消えないジェーンの心の傷は相当なもので、そのことをシャルロットに語る姿はとても痛々しく、同じ母親として胸に迫るものがあった。また「老い」に対する怖さや不安を語っていたところにも、自分の母やまたいつか迎える自分の未来を重ねて見た。

自分の内面を赤裸々に語り、それを受け止める娘がいる。こんなふうになるには年月を要しただろうが、そんなジェーンとシャルロットの関係性が素敵だなと思った。

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シャルロットの娘・アタルちゃんも登場した。このお嬢さんがもう、女優のようにぴかぴかで愛らしかった。どこの家でも3代目は家族みんなの光みたいな存在なのだなぁ。孫に接する優しいおばあちゃんのジェーンの微笑みに、心がほぐれた。


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母娘でゲンズブールが住んでいた家を訪ねるシーンもあって、捜査潜入気分でドキドキした。洒落たオブジェの数々、アールデコのバーカウンター、ピアノ。まるでまだそこにいるかのようにインテリアもそのまま。吸いかけのジタンが灰皿に無造作に置かれていて。ゲンズブールの気配を感じる部屋で、母娘が思い出を語るシーンは映画のようだった。

この秋にここが「Maison Gainsbourg」としてオープンするそうだ。いつかまたパリに行った時にぜひ、訪ねてみたい。

ダーチャ訪問記

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存在していることが奇跡。宝物殿のようなお店、「しまくま堂」さんのダーチャ。

店主Kさんが旅をし、その審美眼で選び抜いた東欧やロシア圏のアンティーク雑貨を仕入れ販売しているお店だ。

ダーチャとはロシア語で「手づくりの小屋のある庭」のことを指すそう。温泉街・定山渓の手前に位置する自然豊かな簾舞という場所にその店はある。

先日、公私共にお世話になっている雑貨店fèveのナホ店長と一緒に、「いつか行きたいね」と言い合っていたダーチャを訪問してきた。


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扉を開けて声が出ない人はいないだろう。

360°、どこを見ても完璧な美の世界。置いてあるもの全てをひとつひとつ手にとって見てみたくなるが、それにはかなりの時間を要するだろう。それくらいたくさんの宝もので溢れている。


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抜群のディスプレーセンスで、雑貨たちが居るべきところに配置されている。みんな居心地が良さそうだ。

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ダリアと書棚がある光景も、インテリアの洋書の1ページのようだった。どこか遠い国のだれかの普段の暮らしぶりが伺えるようなコーナー。

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このスペースではおじさんの顔がついたピッチャーが私のイチオシ。顔のついたアンティーク品に目がないもので。

もっと特別なものに出会ってしまったので、このおじさんは次回行った時にまで居てくれたら連れて帰ろうと思う。


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テーブルと椅子が置かれた場所で、Kさんがお手製の「ざくろソーダ」をご馳走してくれた。


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太陽の強さが幾分弱まってきたとはいえ、まだまだ暑い日だったので、冷たくて甘酸っぱいソーダが美味しくてありがたかった。


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女神のような微笑みの店主のKさん。旅の面白いお話はもちろん、音楽や美術、サブカルまで知識と話題が豊富なので、話していてとても楽しい方だ。

今まで嘘とミシンの作品にするためのヴィンテージの生地を、Kさんから購入させていただいている。

しまくま堂のダーチャでは、このカウンターで東欧のワインやコーカサスのお茶など珍しい飲み物を注文することもできる。

お買い物をしながら、まるで旅の途中のような気分で、のんびりダーチャ時間を楽しませてもらった。

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ダーチャで出会ってしまい、家に連れ帰った特別な逸品を最後にご紹介。

バラライカを爪弾くおかっぱのお人形さん。

目に飛び込んできた時、自分の分身かと思った。

思わず「まさか売り物ではないんですよね」と確認してしまったほど、私にとって光輝いて見えた。

ソビエトからやって来た女の子。一生、私のそばにいてもらおうと思う。

 

しまくま堂ダーチャ

札幌市南区簾舞1条2丁目5-21  駐車場あり  

交通機関  地下鉄 南北線真駒内」駅→じょうてつバス12番のりば   

定山渓、豊滝方面行き『東簾舞』下車徒歩6分

дачаしまくま堂