風に乗って空を泳ごう

世界にひとつの布小物を制作する嘘とミシン。日々感じたことや体験したことを気ままに綴ります。

さよなら冷蔵庫

結婚した年からずっとわが家の大事な食料を冷やし続けてきたSHARPの冷蔵庫。

お正月明けに突然冷やす力が弱まり、アイスクリームを筆頭に冷凍食品が溶け出してきた。

無理もないな、勤続24年目だもの。とうとうお役御免の時を迎えそうということで、夫とヨドバシカメラに行って新しい冷蔵庫を予約した。頼んだ冷蔵庫のメーカーの品物はどれも納期が遅く、届くまで2週間以上かかるということだった。

さて食料の保存、どうしよ。そうだ、今はマイナスの雪の世界だ。庭の雪山にクーラーボックスを入れて天然冷蔵庫として使うことにした。

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そんなわけで、かなり面倒くさいが食事のたびにお肉や冷凍の食材をそこから取り出して調理するという、ちょっとしたサバイバル生活がスタート。

それもなんだか少し楽しいかもと思えてきた頃、突然古い冷蔵庫がまたギュイーンと音をさせながら動き出した。「まだボク、使えるよ!」と言わんばかりに。ぐんぐん庫内の温度を下げていく冷蔵庫。老体に鞭打って。切ない。家電にも心があるように思えてならなかった。

でも臨終が近いことには変わらなかった。

庫内がマックスまで冷えると、こんどはまたどんどんぬるくなっていったから。

そんなことを繰り返しているうちに新しい冷蔵庫が届く日が近づいてきた。

いよいよ今日でさよならという日の朝。

できる範囲ではあったがきれいに磨きあげ、最後は私の手でコンセントを抜いてあげた。

ウンウン音を鳴らしながら頑張って働いていたコンプレッサーの音が消えた。心臓が止まったかのようだった。

なんだか安楽死させたみたいだなと思って「ありがとうね」と言いながらボディをさすってあげた。

新しい冷蔵庫を届けにきてくれた配送のおじさんにこの事を話すと

「24年はすごいわ。聞いた事ないよ。よく働いたね。任せて!最後までちゃんと運んでやるからね。」と言ってくれた。

運びこまれた新しい冷蔵庫はどこもかしこも真っ白で、ドアがフレンチタイプと呼ばれる観音開きのかっこいい子。もちろんすごく嬉しかった。

けれど雪の中トラックに積み込まれていくボロボロのシルバーの冷蔵庫の方が、なんだかずっと愛おしくて悲しかった。

家電ひとつにこんなに感情移入してしまうとは。バカみたいな話だけど。

カラオケ行こ!

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「カラオケ行こ!」が笑って泣けてすごくいい映画だった。

2月は私にとって神様みたいな海外監督の作品の公開が目白押しだから、忙しくてもう行けないけど、可能ならもう一度観たいくらい好きな作品だった。

 

この映画、合唱部部長の中学3年生の聡実くんと、カラオケ大会のために歌が上手くなりたいヤクザの狂児との交流を描くという、ありえないファンタジー設定なのだけど、嘘っぽく見えなかったのがすごい。

あれは大阪のどこか小さな町で本当にあった出来事だったのではないかと。

青春映画を撮らせたら絶対の山下敦弘さんが監督なのと、シンプルながら研ぎ澄まされた美しい台詞が並ぶ野木亜紀子さんの脚本だからなのだろう。

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校門前に綾野剛が迎えに来てたら、カッコ良すぎてビビる。ヤクザだし。

この映画を初めて知ったときに「え?またヤクザ役?」と思ったが、今回はちょっとナンパで優しくユーモアのあるヤクザ。関西弁なのも手伝って

親しみのあるお兄ちゃんぽいヤクザ役がなんともはまっていた。聡実くんとのBLとも思えるラブラブ関係も、とにかくかわいかった。

それにこの作品はカラオケや合唱部をモチーフにしているので、「歌うこと」の素晴らしさが映画からたくさん伝わってきた。

ヤクザだろうが中学生だろうが、思い切り歌っている姿は平和で、みんな素敵。


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万年最下位脱出を企むヤクザ・“ハイエナの兄貴”を演じた橋本じゅんさん。抜群の安定感で必ず笑わせてくれるから大好きだ。新しいドラマのキャストにこの人がいると知ったら嬉しくなる名俳優のひとり。
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原作の漫画にはない設定だったらしいが、聡実くんがときどき息抜きに来る映画研究会の映写室。

ここで「自転車泥棒」や「カサブランカ」などの往年の名作を中学生ふたりがビデオテープで鑑賞してるのが、とてもいいのよね。こういうゆとりが、今の子たちにあるだろうか。

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思春期、ましてや反抗期を迎える難しい年頃の男子。

母親ならその扱いに手を焼き、悩み、頭の中が心配や怒りに支配されて、円形脱毛症になる人だっているだろう。(それ過去の私)

それなのに聡実くんの両親はなんだかあっけらかんとしたゆるい雰囲気で子どもをちゃんと愛してるのが分かるし、合唱部の副顧問・ももちゃん先生(芳根京子)もいつも笑顔で大らか&天然なので、子どもたちにも慕われている。

そして学校の先生でもない立場のヤクザの狂児が、全く別の角度からものごとを教えてくれたり優しく諭してくれるのだから、聡実くんにとっては恵まれた環境だったのだと思う。大袈裟にいうと地域ぐるみで子どもを育ててるというか。そんなのいいなぁと思う。

狂児との出会いふれあいを経てから、最後にある衝撃的な出来事が起こる。そこから聡実くんの心が一気に解放されていく物語の〆が最高だった。

卒業式を迎えてひとまわり大きく成長した聡実くんの姿は凛々しくて、お母さんは胸がいっぱいになったよ。


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綾野剛が裏声で歌う「紅」は気持ち悪くて面白かったが、地声で歌う「ルビーの指環」や「歩いてかえろう」がめちゃくちゃセクシーだった。音源化されればいいのに。

22年ぶりの「アメリ」

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新年最初に観る映画はデジタルリマスター版でスクリーンに蘇った「アメリ」と決めていた。

初公開されたのは22年も前のこと。

渋谷のシネマライズに並んで、満席のシートで見たことを思い出す。

毒があってファンタジックな世界全開のジャン=ピエール・ジュネ監督の作品はもともと好きだった。「デリカテッセン」「ロストチルドレン」はとくに今でも好きな映画として挙げられる。

しかし、その二作の後に撮られた女の子が主役の「アメリ」については、ほぼ内容の方は全くと言っていいほど覚えていなかったので、今回新鮮な気持ちで向き合えた。

そうだ、アメリってちょっと風変わりでおせっかいな優しい女の子だったな。

他人のお世話ばかり焼いて自分のこととなると不器用なアメリ。彼女の恋が最後に成就するシーンでは「良かった!良かったね!」とつい母親目線で見てしまい、幸せな気持ちに包まれた。

あの頃「アメリ」は雑誌でたくさん特集されていたし、アパレルやカフェとのコラボもあってなんとなく「おしゃれ映画」として語られていたけれど、意外にもしっかりと中身がある映画だったんだな。

魔法のフィルターがかかったようなとろみのある映像や、ザ・オールドパリといった切ないヤン・ティルセンの音楽は、時を経ても普遍的な良さがあった。


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映画を観たあと、なんとなくまっすぐ家に帰るのはもったいなくて、隣のBARに寄って映画の余韻に浸ることにした。

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去年の「絵本とわたし展」で一緒に参加した童話作家のたちばなはるかさんが、今回パンフレットの中でパリマップのイラストを手掛けられている。ちょっと猫背なアメリや手描きの文字がかわいいの。

アメリのようにモンマルトルのサクレクール寺院の階段を駆け上がりたいなぁ。そしててっぺんからパリの街並みを眺めたい。

マップを眺めながらコーヒーを飲み豆をポリポリ口に運ぶ。

パリと映画のことだけを考える正月、夜の10時過ぎ。至福の時間だった。

 

PERFECT DAYS

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今年最後に観た映画がこれで良かった。

ヴィム・ヴェンダース監督の「PERFECT DAYS」。

この映画の主人公、平山さん(役所広司)の仕事は公共トイレの掃除をすること。

規則正しい生活をし、無駄のない動きと真摯な姿勢でトイレをぴかぴかに磨く平山さんを見ていると、なぜか懐かしの「元気が出るテレビ」に出演していたエンペラー吉田さんの名言「偉くなくとも正しく生きる」が浮かんできた。

まさにこの言葉を体現する平山さんの生き方。

休憩中はサンドウィッチを頬張りながら木々を見上げて満ち足りた表情をして過ごす。清々しい仕事っぷりに加え、リラックスしている時の姿はチャーミングで魅力的だった。

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《分かり合えるよい関係の姪っ子とのふれあいにも叔父のことを思い出して胸が熱くなった。》

 

植物、フィルムカメラ、木漏れ日。

カセットテープで聴く音楽。

仕事のあとの熱い銭湯と居酒屋で飲む一杯の酒。古本屋で一冊ずつ買っては寝る前にちびちび読む本。

好きな物や事に囲まれた平山さんの日常はささやかだけど上等だ。

そして他人に向ける視線が優しいのは

人生の光と影を知っていて、すべてを浄化してきたからなのだろう。

人間味溢れる平山さんを演じた役所広司さん。

どれだけ褒めちぎっても足りないくらい素敵な演技だった。

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《本好きの平山さん。口数は少ないが豊かな人間性と広がる宇宙を感じさせてくれる。好きなタイプだ…》

 

消えて欲しくない東京の下町の風景、人情。ヴェンダースが撮るそんな景色や詩的な台詞も切なくて美しかった。やっぱりヴェンダース好きだな。

 

ラストシーンで流れるLou Reed

「PERFECT DAY」他

カセットテープから流れてくるlo-fiな洋楽はどれも沁みるいい曲ばかり。

さっそく自分で曲を集めて勝手にサウンドトラック化しちゃった。

 

そして「わっあがた森魚さん!」「え?あの店主は柴田元幸さんだったの?」などところどころに個性豊かな

「あの人この人」がサプライズ的に登場するのにも驚かされたし

私にとって嬉しい贈りものだった。


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映画館のソファに沈み込むと本当にほっとする。

振り返ると今年もたくさん映画が観られて幸せだった。

 

来年一本目に観る映画は、もう決めてある!

each &every / day trip Tokyo

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ほぼ行くのを諦めていたところを「行っておいで」と夫に背中を押され、半年ぶりの東京日帰り旅へ。

関東はどんより曇り空だった。でも東京タワーが見えてくると気分が上がる。
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行きの飛行機は得意のLCC。成田空港から渋谷までのバスの中、小腹が空いた時のためにバッグに忍ばせておいた月寒あんぱんを出す。移動が多く、たくさん歩く旅ではスタミナ切れが一番良くないと思っている。

前回の京都旅行のときに母に「ほんとによく食べてるね」と言われたくらい、すぐにエネルギーチャージができるような食べ物を色々と持ち歩いているのだ。いつ災難に遭うかも分からないしね。

 

さてお昼だ。渋谷に着いて、本格的にお腹がすいたので46階建ての高層ビル「SHIBUYA SKY」に寄り、直感で串揚げのお店に入ってみた。大将が目の前で次々に揚げてくれる蓮根、えび、豚ヒレ。人の揚げてくれる串揚げってなんでこんなに美味しいのだろう。嬉しくて、猫舌なのにちょっと急いで食べてしまい、やけどをした。

バーキン片手にやってきた見るからにリッチな髪の長いお姉さんが隣に座り、一番高いコースを頼んだ。ぐいぐい旨そうに生ビールを飲んでいる。コの字のカウンターの隅にいるくたびれたおじさんは私と同じ一番安いコースでお茶を飲んでいる。

赤ちゃん連れのママ友チームやサラリーマンで混雑する平日のランチタイム。店全体に目配り気配りを利かせながらアルバイトの女の子に的確な指示を飛ばし、同時に揚げ物をする大将はそうとう出来る人だ。うむ、さすが渋谷の一等地で店舗を任されてるだけはあるな。

ひとり旅は人間観察も面白い。


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満腹で次に目指したのは、代官山。メインイベントのminä Perhonenの2024春夏コレクションの展示予約会へ。
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《each &every》が来シーズンのテーマで、モチーフはミナらしいお花や蝶、鳥、そして鉛筆などユニークなものまで。色は鮮やかなグリーンやミントシャーベットやパステルピンクなどもあって、すっかり心の中は春模様に。

試着させてもらった「flower crown」というテキスタイルのワンピース。お花のリングが刺繍で表現されていて、驚くほど豪華で美しかったが、ちょっと私には地味だったので(←ここ笑うところです)こちらは試着のみで終了。

今回はマロンのようなレンガのような素敵な茶色のリネン地に、蝶とお花とタンバリンが刺繍されたウフフな春のコートと、信じられないくらい極太のデニムを予約させてもらった。このデニムには「everyday」という洒落た名前がついてるのに「ボンタンデニム」と勝手に名付けたら、同世代のミナスタッフさんに「ボンタン!」とウケてもらえたので良かった。桜が咲く頃に届くこのかわいい洋服たちを着て、また元気にいろんな場所へ行きたい!よし、がんばるぞ!という気持ちで代官山をあとにする。
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代官山→中目黒。通っていたフランス語教室があった目黒川のほとりを歩いていると、赤ちゃんだった頃の息子が家で泣きながら夫と留守番をしていたことや、教室のあとに松浦弥太郎さんの古本屋さん「COW BOOKS」を覗くのが好きだったことを思い出したりなんかして、すごく懐かしい気持ちになった。
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帰りの飛行機まで少しだけ時間があったので、中目黒から便利な副都心線に乗って伊勢丹新宿店に久しぶりに寄ってみた。

札幌のデパートのクリスマスったらホントにしょぼいので、大都会のクリスマスのショーウィンドウを見るのはこの時期ならではの楽しみだ。

 

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Astier de Villatteがポップアップショップをやっていた。

なんと店先にどかーんとパリの川沿いにあるブキニストを模したものが。しかも、きっとパリでしか買えないような見たことがないデザインブックや写真集、ZINEの類まで。欲しいと思う本が次々見つかったけど、値段が…。嘘でしょ!と思うぐらい高かった。
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この奥には世界中から集めたのか?というくらいの量のクリスマスのガラスのオーナメントのコーナーが。大迫力。しかし一個5000円以上するんやで。クリスマスツリーに飾る分買ったら破産するわ。フライングタイガーので充分かも、と思いながら目の保養だけはできた。やっぱり伊勢丹はすごいな。
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今年も伊勢丹三越のクリスマスの包装紙、タグ、そしてデパート全体のキャンペーンデザインを、ミナの皆川明さんが担当されている。この紙が欲しかったので自分用の紙のお香をわざわざラッピングしてもらった。
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伊勢丹の一階、ギフトコーナーで出会ったムスクとラズベリーの香りがする紙のお香。韓国のOPTATUMというブランドのものだ。香りが好きなのはもちろん「パッケージデザインもクラシックでいいなぁ、こんなん見たことない!」とウキウキして購入したら、しばらくして札幌のステラプレイスの中にある雑貨屋さんでも買えることを知る…。

いや、伊勢丹のディスプレーはすごく素敵だったし、店員さんのアドバイスも超一流だったし!

「どこで買うか?どんな気分で買うか?」それが大事よね。

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地下の魅惑のフードコーナーで家族へのお土産のお菓子と、飛行機の中で食べる小腹減った対策のパンなどを買い込んで新宿南口まで歩き、羽田空港行きのリムジンバスに乗りこんだ。

さようなら。ネオン煌めく俺の街、新宿。

次に新宿に来る時はもっとゆっくりして、思い出横丁の「カブト」でぐるぐる巻きのうなぎ串でも食べたいなぁと思いながら。

絵本とわたし展 vol.8

 

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11月7日から札幌資料館で6日間に渡って開催された「絵本とわたし展vol.8」

落ち葉とともに街がグラデーションを伴って美しく輝く季節に、資料館で穏やかに過ごした日々をありがたく思い返しています。

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今年もこのクラシックな洋館にたくさんの方が足を運んでくださいました。

国籍も年齢も性別もさまざまな方々が、それぞれ絵本をめくりそして作品を眺め、何かしらの思いを抱かれているであろう光景は、ほんとうに平和そのものでした。

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今回私がテーマに選んだのは、エドワード・ゴーリー作「金箔のコウモリ」という絵本です。

春に東京でゴーリーの展覧会を見た時から、ゴーリーの絵本をテーマにしようと決めていました。

この絵本は、少女モードがバレエ修行ののち時代を象徴するバレリーナとなるまでを描いたバレエマニア・ゴーリーによる光と闇の物語です。

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こちらは、絵本からイメージを膨らませて創作したメイン作品の「金箔のコウモリクッション」です。

トッププリマになったモードの光の部分に焦点をあて、当たり役《金箔のコウモリ》の衣装を身につけた彼女が舞台で一番輝いていた瞬間をアップリケしました。ゴーリーの描くモノクロの線画に、もしも色がついたなら?と想像しながら作った一品です。
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2作目は「ポワントバッグ」バレリーナのpoint(ポワント=爪先立ち)を表現したバッグで、黒いレースが二重になったチュチュをめくると鍛え上げられた脚がのぞきます。仕掛け本のように楽しんで欲しいとの思いも込められています。

バッグのベースにしたのはウィリアム・モリスの「いちご泥棒」という生地。モリスの生地ははじめて使ってみましたが、バレエや舞台に流れるクラシック音楽のイメージとなんて合うんだろう!と思いました。

 

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そして3作目の「男爵ポーチ」

モードの才能を見出し、トッププリマに育て上げた、バレエ劇団のオーナー・ド・ザブルス男爵。若い彼女が横道に逸れそうになれば「意味があるのは芸術だけだ」と諭して面倒をみた男爵。そんな男爵の言葉「Only art meant anything  」もアップリケしてみました。

お金持ちでダンディで何よりもバレエを愛する、眼光鋭き男爵。そう見えるように頑張って作った思い入れの深い一品です。

クッションは非売品にしましたが、あとの2つは会場で販売させてもらいました。ほぼ一目惚れしてくださった方たちが購入してくださって、どちらも旅立ちました。

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展示方法にも工夫をこらしました。

その一生に「鳥」がついて回ったモードは、公演先に移動中の飛行機でバードアタックに遭い、亡くなってしまいます。

ですから今回は、彼女のお葬式のつもりで全体をディスプレーしました。黒が多い中に一点だけ華やかな赤を入れたくて、前半は赤いグロリオサ、後半はデンファレーの生花を飾りました。


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さらに!在廊日は自分もゴーリーの世界の住人になったつもりで、私にはレアなブラックコーデで参加しました。

頭に乗っけてるのは毒蜘蛛タランチュラのカチューシャ。「マダム・タランチュラ」としてみなさまをお迎えしました。いらっしゃったお客様たち、そして仲間の作家さんたちにも喜んでもらえて、みなさんたくさん写真を撮ってくれました。

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在廊2日目の装いは「金箔のコウモリ」の登場人物のファッションに合わせて《20's》をテーマにしました。ルルのシルクのワンピースに伝説の東京のカフェ 「吾妻橋パーラー」で500円で買った付け襟+sugriのお花ヘッドドレス。ぐるっと目の周りを黒くして。

化粧濃いめですがなにか。

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ここからは他の作家さんたちの作品をご紹介します。

絵本作家のかとうまふみさん。

ご自身の絵本「いれていれて」より。このふわふわの妖精人形シリーズ、とってもかわいいのです!
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陶芸家のこむろしずかさん。たくさんの器を、直筆で書かれた散文詩とともに。

今回こむろさんと初めていっぱいお話できて嬉しかったな。
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工芸家のバイタリティ溢れる千葉朋子さん。荒井良二「はっぴいさん」より、見れば見るほど芸術的なチョッキや、機能的でユーモラスなうさぎの形のポシェットなどが展示されました。

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紙もの、布もの、企業のDMデザインなども手掛けるINOさん。みんな大好き「わたしのワンピース」(にしまきかやこ作)から。

背景と同じワンピースを着たかわいいうさぎたちが、次々と旅立ちました。
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この「絵本とわたし展」の主催者で、今回同じ資料館で初の個展も開催された、あたたかくて優しいお人形やぬいぐるみを作ることで知られるでこっちーさん。

乾栄理子・文/西村敏雄・絵「バルバルさん」より。
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絵本作家のたちばなはるかさん。

長く愛されてきたルイス・キャロル不思議の国のアリスからイメージされたやわらかな絵が、うっとりするほど素敵でした。
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彫金作家のalmostjewelleryさんは金工作品の精巧なガロアムシを制作されました。

ガロアムシが枯葉やコケの中で擬態しているかのようで、すぐ分からないのが面白い。絵本は舘野鴻ガロアムシより。
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イラストレーター、絵本作家のマット和子さん。

ご自身の個展も開催されている中のダブル参加でしたが、チェコプラハで出会ったモグラの絵本とマットさんの手づくり絵本モグラのせいかつ」を。
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イラストレーター、絵本作家のすずきももさん。

手編みの赤い手袋がもうすぐ来るクリスマスを思わせるガーランドになって並んでいました。

絵本はフローレンス・スロボドモン文・ルイス・スロボドモン絵「てぶくろがいっぱい」
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イラストレーターのやましためぐむさん。

ひだまりのような優しい笑顔にいつも和ませてもらうのですが、作品もご本人と同じく太陽のように優しかったです。

「わたしとあそんで」マリー・ホールエッツ作より、今年は積み木と紙粘土のお人形でした。

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最後に《嘘とミシンの美女採集》のコーナー!

着物と帽子のコーディネートがすてきな陶芸家・こむろしずかさん。今回の展覧会で誕生した嘘とミシンの「勲章ブローチétoile」を帽子につけてくださっています。
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そしてこちらは絵本作家のたちばなはるかさん。

個展会場にて撮影させてもらいました。連日黒と白の装いでいらしてたのですが、どの日も個性的でどこかアンティーク風味な着こなし。真のおしゃれさんです。
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絵本とわたし展は再来年は10周年を迎えます。 

ちょうどその頃、北海道大学の構内に建築家の安藤忠雄さんが設計する「えほんの森」という絵本図書館が設立されると聞いています。

長く活動を続けてきた「絵本とわたし展」のメンバーで、その図書館で何か絵本にまつわるイベントができたらいいね!とみんなで夢を膨らませ、

「よし!それまでまた皆んなそれぞれ頑張ろうね!」とエールを交換し合って、絵本展は閉幕しました。

ご来場くださった方、メッセージをくださった方、そしてこれを読んでくださっている方へ大きな声で

『どうもありがとうございました!!』


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ここ資料館で10回目の「絵本とわたし展」を迎える時、ついでに個展を開催しちゃおうかな!と思っています。

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新作はもちろん、歴代の作品を並べてコーナーを作って、今日はクラシック、今日は昭和歌謡、今日はロック…日替わりでBGMを変えて。それに合わせたファッションで皆さんをお迎えして。

そんなまるでパーティーのような楽しい企画を盛り込んだ展覧会をできたらなぁと、構想を練ってはワクワクしています。

 

 

雪舟庭園にゆるキャラ発見・京都3日目

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京都最終日は気持ちの良い秋晴れの空の下、ホテルを少し早い時間に出発。乗ったタクシーの運転手さんはお話好きの感じの良い人で、これから向かう東福寺塔頭寺院の中でご自身が一番好きだという秘密のお寺を教えてくれた。ふとみると車内には「ワンピース」のキャラクターであるルフィーやローの小さなフィギュアが飾ってあったので「お好きなんですね?」と訊ねると、息子さんの影響でテレビアニメを見ているとのこと。とっておきのお寺を教えてくれたお礼に漫画の最新ワンピース情報をネタバレにならない程度に教えてあげた。


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臨済宗東福寺派 雪舟庭園・芬陀院」に到着。

水墨画で有名な雪舟がデザインした石庭を見に来たのだ。
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いきなり入り口近くにゆるキャラ発見!

出迎えてくれた女性のお話によると、90歳になられる前住職が描かれたものだそう。


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朝の光の中に鹿おどしの音が響き、心身清まるったらありゃしない。

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雪舟が作庭した鶴亀の庭。

鎌倉時代、幼かった雪舟は禅僧になるために修行に入るも大好きな絵ばかりを描いていて住職に叱られ、柱に縛り付けられ泣いていたという。ところが、落ちた涙を使って足で描いていた鼠の絵がものすごく上手なのを見た住職が「これは坊主をやらせてる場合ではない」と思い、大胆にも雪舟に作庭を依頼したという逸話が残っている。

中国に渡り、本格的に水墨画の勉強を始めたその後の雪舟の活躍ぶりを見ると、「住職、ナイス判断!」だし、ひとが好きなことで輝くには環境が本当に大事なんだと思わされるエピソードだ。

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ちなみにこの庭は二度に渡って火事に見舞われ荒廃していたものを、昭和に入ってから私の好きな作庭の匠・重森三玲氏が復元している。

匠が新たに作庭した東庭をのぞむ、茶室にて。


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丸い窓からこんにちは。楽しかったなぁ!

長く書き連ねた京都旅日記はこれにて終了。


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行きの飛行機で坂本龍一さんの自伝が面白くて一気に読んでしまって、帰りに読むものがなく仕方なく空港で買った本。
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ここ数年の母との旅行で撮影した写真は、全部小さなアルバムに製本してもらっている。

自画自賛だがこれがなかなかのクオリティ。今回も参加者全員にプレゼントした。