11月7日から札幌資料館で6日間に渡って開催された「絵本とわたし展vol.8」。
落ち葉とともに街がグラデーションを伴って美しく輝く季節に、資料館で穏やかに過ごした日々をありがたく思い返しています。
今年もこのクラシックな洋館にたくさんの方が足を運んでくださいました。
国籍も年齢も性別もさまざまな方々が、それぞれ絵本をめくりそして作品を眺め、何かしらの思いを抱かれているであろう光景は、ほんとうに平和そのものでした。
今回私がテーマに選んだのは、エドワード・ゴーリー作「金箔のコウモリ」という絵本です。
春に東京でゴーリーの展覧会を見た時から、ゴーリーの絵本をテーマにしようと決めていました。
この絵本は、少女モードがバレエ修行ののち時代を象徴するバレリーナとなるまでを描いたバレエマニア・ゴーリーによる光と闇の物語です。
こちらは、絵本からイメージを膨らませて創作したメイン作品の「金箔のコウモリクッション」です。
トッププリマになったモードの光の部分に焦点をあて、当たり役《金箔のコウモリ》の衣装を身につけた彼女が舞台で一番輝いていた瞬間をアップリケしました。ゴーリーの描くモノクロの線画に、もしも色がついたなら?と想像しながら作った一品です。
2作目は「ポワントバッグ」。バレリーナのpoint(ポワント=爪先立ち)を表現したバッグで、黒いレースが二重になったチュチュをめくると鍛え上げられた脚がのぞきます。仕掛け本のように楽しんで欲しいとの思いも込められています。
バッグのベースにしたのはウィリアム・モリスの「いちご泥棒」という生地。モリスの生地ははじめて使ってみましたが、バレエや舞台に流れるクラシック音楽のイメージとなんて合うんだろう!と思いました。
そして3作目の「男爵ポーチ」。
モードの才能を見出し、トッププリマに育て上げた、バレエ劇団のオーナー・ド・ザブルス男爵。若い彼女が横道に逸れそうになれば「意味があるのは芸術だけだ」と諭して面倒をみた男爵。そんな男爵の言葉「Only art meant anything 」もアップリケしてみました。
お金持ちでダンディで何よりもバレエを愛する、眼光鋭き男爵。そう見えるように頑張って作った思い入れの深い一品です。
クッションは非売品にしましたが、あとの2つは会場で販売させてもらいました。ほぼ一目惚れしてくださった方たちが購入してくださって、どちらも旅立ちました。
展示方法にも工夫をこらしました。
その一生に「鳥」がついて回ったモードは、公演先に移動中の飛行機でバードアタックに遭い、亡くなってしまいます。
ですから今回は、彼女のお葬式のつもりで全体をディスプレーしました。黒が多い中に一点だけ華やかな赤を入れたくて、前半は赤いグロリオサ、後半はデンファレーの生花を飾りました。
さらに!在廊日は自分もゴーリーの世界の住人になったつもりで、私にはレアなブラックコーデで参加しました。
頭に乗っけてるのは毒蜘蛛タランチュラのカチューシャ。「マダム・タランチュラ」としてみなさまをお迎えしました。いらっしゃったお客様たち、そして仲間の作家さんたちにも喜んでもらえて、みなさんたくさん写真を撮ってくれました。
在廊2日目の装いは「金箔のコウモリ」の登場人物のファッションに合わせて《20's》をテーマにしました。ルルのシルクのワンピースに伝説の東京のカフェ 「吾妻橋パーラー」で500円で買った付け襟+sugriのお花ヘッドドレス。ぐるっと目の周りを黒くして。
化粧濃いめですがなにか。
ここからは他の作家さんたちの作品をご紹介します。
絵本作家のかとうまふみさん。
ご自身の絵本「いれていれて」より。このふわふわの妖精人形シリーズ、とってもかわいいのです!
陶芸家のこむろしずかさん。たくさんの器を、直筆で書かれた散文詩とともに。
今回こむろさんと初めていっぱいお話できて嬉しかったな。
手工芸家のバイタリティ溢れる千葉朋子さん。荒井良二作「はっぴいさん」より、見れば見るほど芸術的なチョッキや、機能的でユーモラスなうさぎの形のポシェットなどが展示されました。
紙もの、布もの、企業のDMデザインなども手掛けるINOさん。みんな大好き「わたしのワンピース」(にしまきかやこ作)から。
背景と同じワンピースを着たかわいいうさぎたちが、次々と旅立ちました。
この「絵本とわたし展」の主催者で、今回同じ資料館で初の個展も開催された、あたたかくて優しいお人形やぬいぐるみを作ることで知られるでこっちーさん。
乾栄理子・文/西村敏雄・絵「バルバルさん」より。
絵本作家のたちばなはるかさん。
長く愛されてきたルイス・キャロルの「不思議の国のアリス」からイメージされたやわらかな絵が、うっとりするほど素敵でした。
彫金作家のalmostjewelleryさんは金工作品の精巧なガロアムシを制作されました。
ガロアムシが枯葉やコケの中で擬態しているかのようで、すぐ分からないのが面白い。絵本は舘野鴻「ガロアムシ」より。
イラストレーター、絵本作家のマット和子さん。
ご自身の個展も開催されている中のダブル参加でしたが、チェコ・プラハで出会ったモグラの絵本とマットさんの手づくり絵本「モグラのせいかつ」を。
イラストレーター、絵本作家のすずきももさん。
手編みの赤い手袋がもうすぐ来るクリスマスを思わせるガーランドになって並んでいました。
絵本はフローレンス・スロボドモン文・ルイス・スロボドモン絵「てぶくろがいっぱい」。
イラストレーターのやましためぐむさん。
ひだまりのような優しい笑顔にいつも和ませてもらうのですが、作品もご本人と同じく太陽のように優しかったです。
「わたしとあそんで」マリー・ホールエッツ作より、今年は積み木と紙粘土のお人形でした。
最後に《嘘とミシンの美女採集》のコーナー!
着物と帽子のコーディネートがすてきな陶芸家・こむろしずかさん。今回の展覧会で誕生した嘘とミシンの「勲章ブローチétoile」を帽子につけてくださっています。
そしてこちらは絵本作家のたちばなはるかさん。
個展会場にて撮影させてもらいました。連日黒と白の装いでいらしてたのですが、どの日も個性的でどこかアンティーク風味な着こなし。真のおしゃれさんです。
絵本とわたし展は再来年は10周年を迎えます。
ちょうどその頃、北海道大学の構内に建築家の安藤忠雄さんが設計する「えほんの森」という絵本図書館が設立されると聞いています。
長く活動を続けてきた「絵本とわたし展」のメンバーで、その図書館で何か絵本にまつわるイベントができたらいいね!とみんなで夢を膨らませ、
「よし!それまでまた皆んなそれぞれ頑張ろうね!」とエールを交換し合って、絵本展は閉幕しました。
ご来場くださった方、メッセージをくださった方、そしてこれを読んでくださっている方へ大きな声で
『どうもありがとうございました!!』
ここ資料館で10回目の「絵本とわたし展」を迎える時、ついでに個展を開催しちゃおうかな!と思っています。
新作はもちろん、歴代の作品を並べてコーナーを作って、今日はクラシック、今日は昭和歌謡、今日はロック…日替わりでBGMを変えて。それに合わせたファッションで皆さんをお迎えして。
そんなまるでパーティーのような楽しい企画を盛り込んだ展覧会をできたらなぁと、構想を練ってはワクワクしています。