先月のこと。旭川〜美瑛のコースで車を運転し、ひとり旅をしてきた。
泊まった旭川のホテルは一人で過ごすにはもったいないくらい広くて快適だった。まだまだ観光客が戻ってきていないからか、部屋をアップグレードしてくれたのだ。
カゴが好きすぎて、今回の旅では2個持ち。
💋のついたカゴには着替えと化粧品と本を。まんまるのカゴは手持ち用。お財布やハンカチ、マスクケースなどを入れて。
夜ごはんを食べようと予約なしで入ったホテルの和食店。ここも殆ど客がいなかったからか、会社の宴会をするような立派な個室に通されて、さすがに一瞬「え…」と寂しくなった。でも、泡が美しいクラシックの生と揚げたての天ぷら御膳が運ばれてきたら、そんな気持ちはどこへやら。
しいたけ、アスパラ、さつまいも、白身魚、しそ、なす、海老…プロが揚げてくれる天ぷらをひとり贅沢に味わう幸せに浸った。
朝ごはんはここで食べると決めていた。
東川町の大好きなお粥やさん「奥泉」。
札幌から久しぶりにやって来た私を笑顔で迎えてくれた店主。またまた特等席に案内してくれた。
そら豆のお粥、焼売、水餃子、そして中国茶までをゆっくり堪能。
絵のように美しい畑の景色を独り占めしながら。
お腹をポンポコリンに膨らませたまま、次に目指したのは東川町から30分の丘の町、美瑛。
駅のすぐそばに、青と白のストライプの屋根がかわいいクリーニング店を見つけた。店員さんの制服もバービー人形が着ているような青×白のストライプのワンピースだったらいいのになぁと想像した。
美瑛に来たら必ず立ち寄るお店「スイノカゴ」。
ちょうど見たかった展覧会が始まったばかりだった。
植物や花にまつわる作品や雑貨が飾られた一角はアートギャラリーのようだった。
アンティークショップSkantiqueさんがスウェーデンで買い付けした、味わい深い「食せるキノコの本」に心惹きつけられて購入した。
表紙は色褪せているが、この深い抹茶色と黄色いキノコの色のコントラストが気に入ったのだ。
ページを開くと、本の持ち主だった人が挟んだと思しき四つ葉のクローバーが何枚も出てくるというオマケつき。
本の佇まいから考えてもかなり古いものと見受ける。何十年も経って、遠い異国の北海道で四つ葉を見つけて喜んでいる人がいることを天国にいる前の持ち主さんが知ったら、きっと驚くだろう。
さて、この日のメインイベントは、この白樺回廊の向こうにある料理店でお昼ごはんを食べることだった。
料理家たかはしよしこさんが営む「S/S/A/W BIEI」。
東京・西小山のS/S/A/Wより、たかはしさんご一家がここ美瑛に引っ越してきたと聞いた時から、いつか行ってみたいと憧れていたレストランだ。
白樺の森に囲まれた素晴らしい環境は「どんなお料理が出てくるのだろう?」というワクワク感をより膨らませた。宮沢賢治の『注文の多い料理店』のレストランみたいだと思った。
最初に目の前にサーブされたのは、アスパラガスとラーラキャベツふたつの味が楽しめる「丘スープ」。
“パッチワークの丘“と呼ばれる美瑛の畑の景色を閉じ込めた芸術的なスープだ。ひと匙口に運んだ瞬間、私を含めカウンター席に座った6人の客全員が、多分同時に目を丸くしていたと思う。
今朝まで畑にいたんだね?と問いかけたくなるアスパラとキャベツの瑞々しい命が、スパイスと溶け合って、身体に染み込んでゆく感覚。
メインディッシュの《初夏へと向かう韓国式手巻きプレート》は、一言で表現すると「愛と氣がガツンと詰まった一皿」だった。
確かな作り手たちが育てた旬の野菜たちが、SSAWの技術とアイデアの結晶であるスパイスや調味料をまとって、最高に美味しい状態でその身を捧げてくれていた。
デザートの「いちごとラベンダーのクッキーアイス」がピンクのお皿にのってやってきた。
たかはしよしこさんが私の目の前に立って瞳をキラキラさせながら、花の実にいたるまで、材料ひとつひとつについて説明してくれた。
カウンター席から見えるキッチンは、まさに生の舞台のようだった。スタッフの皆さんも全員いきいきキビキビと働き、心からのおもてなしをしてくれた。
こちらは、感動と感謝の気持ちでいっぱいになった。
お店の森を抜けるとすぐこの景色。
スコールのような激しい雨が降っていたのだけど、夏の始まりって感じがして、それもまた気持ちよかった。
🍦🧵 スイノカゴ
🍽 SSAW BIEI